第44話

 森を雪篤は歩く。

 どうすれば、あいつを生きながらえさせることができるのだろう。

 僕一人だけの魔力じゃ持たない。

 今までみたいにはいかない。

「シロどこだ」

 小さな低い鳴き声と共に魔力喰いは現れた。

大きな体を撫でてやる。

 シロは嬉しそうに、その場に座る。

「シロ、どうしたらいいんだろうな……」

シロがうなり声を上げた。

 なんだ?

 後ろから男の声が聞こえた。

「おい! 坊主そいつから離れろ! そいつはマジックイーターっていう化け物だ! 危険だぞ!」

 雪篤はぞっとした。

 こんな場所に人が来るなんて……

 雪篤は振り向く。

「おじさん、こいつはそんな凶暴な生物じゃないんだ、大丈夫だよ」

「何言ってんだ坊主、じっとしてろよ! 今俺が助けてやるからな!」

 シロは雪篤の前に躍り出る。

 シロの咆哮と同時に、魔法使いの手から、火の矢が放たれる。

その炎をシロは悠々と飲み込む。

 いつになく興奮したシロの口から涎が落ちる。

「こんなんじゃ効かねえか、これでもくらいやがれ!」

「生者と死者の狭間より――」

 男が魔法の呪文を唱え出す。

 だが魔法は放たれなかった。

体が痺れて動けなくなっていたのだ。

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