第42話

 雪篤に連れられて、信也は山の中に来ていた。

見せたいものがあるらしい。

 何だろうか、こんな山の中で。

 そう思いながら信也は雪篤の背中を追いかけていた。

「蚊がすごいなここ」

 腕をパチンと信也は叩く。

「知ってる? 信也、足の菌に蚊がよってくるみたいだから足をエタノールで拭くとよってこなくなるみたいだよ」

「本当かそれ、早く言ってくれよ」

「ははは、情報の差だね」

「なあ、どこまでいくんだよ」

「んー、そろそろのはずなんだけどなあ、あ、いたいた、あれだよ」

 なんだ?

 見たこともない生き物がいた。

 まだ子供みたいで信也と雪篤の膝の高さにも届かない。

 毛がなくてつるつるしている。

 近寄ると、雪篤の足下に身を寄せてきた。

「なんだよ……この生き物」

「わかんないけどかわいいでしょ」

「いや、とてもじゃないが不氣味な部類に入ると思うけど」

「ははは、まあ魔力を食べるみたいだしね」

 信也はこの卵みたいな、生き物を凝視する。

「おい、これヤバイ奴の赤ちゃんなんじゃないのか」

「あー、かもね、けど僕になついちゃったし、僕が育てるよ」

「そうか……」

 俺はその時やめろとも言えず雪篤が魔力喰いを育てるのを放置してしまった。

 もしこのとき、雪篤を止めていたら、あんなことはしなくても済んだんだろう。

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