第41話

花畑で雪篤は信也を眺めながら座っている。

 魔力喰いは雪篤のそばでくうくうと眠っていた。

風がそよそよと吹いて花を揺らす。

「やっと……会えた」

 信也は過去を思いだしていた。

 俺と雪篤はずっと一緒だった、二人とも親が小さい頃に死んでしまって、同じ人に育てて貰っていた。

 寝る時も、ご飯を食べる時も、遊ぶ時も、勉強する時もいつも一緒だった。

 育ててくれた人が魔女だった。

 そのひとから魔法を習っていた。

 雪篤は動物が好きなやつだった。

 きっと人間よりも……

 ドンッ

「キャン!」

「ハハハハハハ」

「見ろよこの老いぼれ何もできないぜ」

 三人ほどの少年たちが老犬を蹴って遊んでいた。

「おい、おまえらなにやってんだよ!」

 雪篤は走ってきて、三人の少年たちにつめよる。

「なんだおまえは」

「うせろよ」

「そんなひどいことはやめろよ!」と雪篤は大きな声でいった。

「俺たちの勝手だろうが!」

「このわからずやあ!」

 雪篤は、三人の少年たちに殴りかかった。

 案の定、雪篤はボコボコにされる。

「ハア、ハア、なんなんだよこいつは、くそ、行こうぜ」

 三人が去ると老犬は、動けなくなっていた雪篤のそばに寄り添っていたが、しばらくするとどこかにいなくなってしまった。

「助けた犬にも見捨てられちゃったな……」

「うう……いてえ、ちくしょう」

 涙が目からこぼれるのを腕で一生懸命拭いていた。

ワン、ワン、と犬の声がする。

 雪篤が目を向けると、老犬が信也を連れてきていた。

 信也は駆け寄る。

「おい大丈夫かよ」

「痛い」

「何があった?」

 雪篤は事情を説明する。

「なんで魔法を使わなかったんだよ……」

「そんなのしてたら、僕が絶対勝つだろ、ズルしてるみたいじゃん」

「おまえなあ、相手三人なんだからそっちの方がズルだろうが、ほら帰るぞ立てるか?」

「うん」

「それにしてもひでえ鼻血だな、母さんに見せてやろうぜ」

信也は歯を見せながら笑う。

 雪篤の顔は半分が鼻血で固まっていた。

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