第35話
もう息は絶え絶えだ。
道なき道を進み続ける。
突然木々がなくなり、開けた場所につく。
そこには、花畑があった。
光が薄紫に染まって花の形をなしているのか、その透明感は向こう側が透けて見えるくらい白に限りなく近い。
葯(やく)の部分は下を、花びらの部分は上を向き、花どうしが寄りそうかのように咲いている。
「キレイ……」
「綺麗だ……」
「おじさん」
「わかってる」
その花畑の真ん中に少年と怪物が寄り添って寝ていた。
これだけ見ると人を襲いそうには見えないくらいすやすやと寝ている。
近づいていくと魔力喰いが氣がついて目を覚まし、低いうなり声を発して、音で少年は目覚めた。
のびをしながら立つ。
「あんたら誰だ? ここの主が助けを求めていたからなにか来るんだろうなと思っていたけど」
少年は手に小さな黒い檻みたいな物を持っていた。
中には幼虫がいる。
たすけて
ここよ
今なら信也にも声が聞こえていた。
「雪篤……俺を忘れたとは言わせないぞ」
信也のまわりに一瞬煙が立ちのぼり、中年の姿は十二歳前後の少年の姿になっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます