第34話

少女は自分の手を取ってくれている大きな手を強く握りしめた。

 二人は見えない壁に飲み込まれるかの様にそれを突き破った。

 さっきまでいた森と、全然違う森に来ている。

 そこは夢で見た光の届かない森だ。

「おじさん……ここだよ、夢で見た場所」


 助けて……

 私はここよ……

 助けて

 お願い


 また萌の頭に前よりも鮮明にあの声が聞こえてきた。

(あなたは誰なの? どこにいるの?)


 こっちよ

 早く……


「おじさん、聞こえる?」

「ん?」

 萌にしか声は聞こえないらしい。

「誰かが呼んでるの、助けてって」

「場所はわかるかな」

「こっち!」

 萌は駆けだした。

 信也は萌を追いかけながら思った。

(何の氣配もしないな、……走るのしんどい!)

「萌! おじさんしんどい……遅くして!」

「あ、ごめん」

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