第33話

 飛ぶのは良いが楽ではなかった。

 とても上手く飛べない。

 萌はそんな風に思っていた。

「蝶の様に舞えないよう」

「こればっかりは慣れないと無理だね、あとちょっとだ」

 目的地の山はもう目の前である。

「ああ、疲れたあ」

 氣をぬいていると、ブワっと突風が吹いた。

 萌は体勢を崩す。

「うわあああああああああああああああ」

 くるくると回転しながら、落下。

森の木の枝に体をぶつけて、枝がバキバキと音を鳴らして折れていく。

 萌が地面に落ちる直前誰かに受け止められた。

「うう、いたああい」

 目を開けると、信也が萌をお姫様抱っこしていた。

「油断大敵、ほら長袖長ズボン着てきて良かっただろ?」

それから二人は徒歩で山道を歩くことにした。

 しばらく進んでいくと。

 信也は立ち止まった。

「どうしたの?」

「ここら辺さわってみな」

 信也の指し示したところには、何もない。

「さわるって何もないけど……」

 と言いながら萌が手を伸ばすと、何かやわらかい見えない壁の様なものがあって、さわった瞬間に波打ち、波紋を広げた。

「ひっ」

 中年は少女の手を取る。

「こっから先は人外が住む場所だ。行くよ」

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