第32話

背から黒いはねが、

 ゆっくりと、

 広がっていく。

 蝶々が羽化していくかの様に、

 若い新芽が生えるかの様に。

 一つ、

 二つ、

 三つ、

 と羽ばたく。

 萌は自分の力で浮いていた。

 閉じていた目を開けて、宙を浮いているのを確認する。

「やったよおじさん!」

「信じたら叶ったろ?」

 信也は楽しそうに笑っていた。

「上手くできたから、ご褒美にこれをあげよう」

 信也は萌に、石のペンダントを渡す。

 それには六芒星の印が刻まれて、表面の一部がシャボン玉の原液の様にマーブル色に染まっている。

「なにこれ?」

 何か不思議な感じがする物だった。

「お守り。魔を打ち払ってくれるはずだよ」

 萌はお礼を言って、首にペンダントをさげた。

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