第30話

森の中は光が届いていなかった。

 ざああっと風が梢を揺らす。

 静かなようで音が溢れている。

 蝶が飛んでいた。

 まるで光でできているかの様に輝いている。

 暗い森の中、無数にそれらはひらりひらりとはねを動かしている。

 ゆっくりと近づく影がいた。

 お母さんを襲ったあの影だ。


 タ


 ス


 ケ


 テ

 

 パッと目を覚ました。

胸がドクドクと音を鳴らす。

 汗をじっとりとかいて氣持ちが悪い。

 時計を振り返るといつも起きる時間より、早いくらいに起きている。

 部屋を出てリビングに行くと、信也が新聞を広げてコーヒーを飲んでいた。

「おはよう、今日は早いんだね」

「おじさん……あのね」

 萌は信也に森の中の光る蝶と、魔力喰いの夢について話した。

 無精ひげを撫でながら信也は答える。

「何かはわからないけど、行ってみようか。多分何かが助けを求めているんだと思うし、魔力喰いもどうにかしないといけないからね」

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