第29話
「人間の言葉を話す時点でおかしいだろうが」
「口の悪い女だにゃ」
「うるせえよ」
萌は黙って猫を見ていた。
猫は突然人間の女性になった。
えっ、と二人は声を漏らす。
「猫だったり、人間だったり、どっちだと思うにゃ?」
「おい、おい、ちょっと待った、どっちなのよあんた、人間が猫になってたのか、猫が人間になったのか」
「さあにゃ」「例えばにゃ」
「昔の人は、地球が地平線だと信じていたにゃ。今は地球は丸いと皆そういう認識をもってるにゃ。けど厳密には楕円だという説もあるにゃ。これ誰が言ってるのかはしらにゃいけど、見たことないのに地球が丸いって信じてるよにゃ。実際は、四角とか、三角だってありえるかもしれないにゃ。あとは、火星って赤いって言われてるよにゃ。けど実際は大氣が青いから青色をしているって話もあるみたいだにゃ。NASAが最初に撮影した火星の写真が青だって話もあるみたいだにゃ。これ信じるにゃ? どっちだと思うにゃ? 誰かの話した嘘かもしれないにゃ? それと一緒で私が猫って言うのと人間って言うのと、本当のことを言うのか嘘を言うのかわからにゃいだろ? ってことはどっちでもいいんじゃにゃいかな結局、どっちでも変わらないんじゃないかにゃ結局」
「わかった、どっちでも良いけどあんたの飼い主が探してるから帰んなよ」
「いやだにゃ、そのうち帰るからほっとけって言っといて欲しいにゃ。スィーユー」
女はまた猫の姿に戻り、尻尾をフリフリ、首につけた鈴の音を響かせながら去って行った。
「猫さん行っちゃったね」
萌はしゃがんでさっきまで猫のいた路地を見つめる。
「依頼失敗かあ、しょうがない、帰ろっか」
舞は腕を頭の後ろにもっていく。
「うん」
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