第25話

「やめとく」

 と萌は冷たくあしらって本に再び目を戻した。

「そんなあ」

 そのお客はカウンターにグデっとなった。

 おまたせと言って舞はコーヒーとトーストをカウンターの上に置く。

「待ってました、舞ちゃんの手作り料理で元氣出そっと」

「うっさい」

 と舞も軽くあしらう。

「そんな嫌がるまいちゃんに朗報です、お仕事持ってきました」

「いい、やんないよ私」

「えっ」

「間に合ってるし」

「猫探しなんだけどなあ」

「あー、動物好きじゃない」

「猫好きじゃない女の子なんているの?」

「ここにいまーす」

「えー、じゃあ猫どおするんだよー」

「自分で探せばいいじゃん」

「猫アレルギーなんだ僕、無理なんだ、それにあの子に嫌われちゃってるし……どうにか連れ戻してきて欲しい」

「手袋でも、マスクでも、眼鏡でもすればよろしい」

「そんなー」

「嫌よそんなありきたりな猫探しとか」

「いやいや、猫探すとかそんなにないでしょ」

「よくある話」

「しょうがないなあ、萌が探してあげるよ」

 パタンと読んでいた本を閉じた。

「え、本当に? やったね!」

 と、涼太郎は言った。

「しょうがないな、萌ちゃん一人だと心配だから舞お姉さんも手伝ってあげよう」

 舞と萌はよしデートだときゃっきゃしていた。

 涼太郎は無言で舞を見つめている。

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