第21話

クラスメイトは無理矢理口を開けられて、トンボを飲み込まされた。

 とんぼさん……

「うわあ、ほんとに食いやがった」

 二人の上級生は楽しそうに笑いあっている。

 トンボを食べた同級生はうずくまってしゃくり上げている。

 萌は思った。

 トンボさんが可哀想すぎる、お仕置きしてやる!

 萌は三人から見えない位置に隠れて手を胸の前で組み、近くの虫たちに呼びかけた。

(虫さんたち力を貸して)

 まずは蚊が集まってきた。

 上級生が氣づかない間にとんでもない箇所が刺されていく。

「うわ、蚊だ! めっちゃいるし!」

 少年二人が蚊を追い払っていると、トンボの軍団があらわれた。

 視界を覆ってなにも見えなくなるほどの数だ。

「うわあ、なんじゃこりゃあ」

「たすけて!」

 虫さんにひどいことをする人は許さない!

「うわあああ」

「学校の中に逃げよう!」

 二人の上級生は逃げていく。

 うずくまっていた同級生はぽかんと口を開けて呆然としていた。

 萌は満足して物陰から出てきてまた歩き出した。

 少年はクラスメイトの萌がいるのに氣づく。

 萌は虫が好きなことをクラスのみんなに知られていた。

「きっと萌ちゃんが助けてくれたんだ……」

 萌は虫をむげに扱う人が許せなかっただけだが、この少年はこの日から萌のファンになった。

 学校が終わると、熊谷が萌を迎えに来る。

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