第20話

教え三。

 もし正体を一般人に知られた場合、その記憶を消さねばならぬ。

「わたし、あれ魔法使いだと思うの!」

 花ちゃんは自信満々で目をキラキラさせて言った。

「えー!」

(おじさん、どーすればいいのこれ……)

「わたしも魔法使いになりたいなあ、なんかかっこよくない?」

「そうだね、使えたらいいけどねえ」

 教え四。

 ただし親しい者などには言ってもよい。例外はあり。

 とりあえず、花ちゃんは放っておくことに決めた。

 初めて自転車の後ろに乗せて貰った日のことを思い出す。

空を飛ぶのは怖かったけど楽しくもあった。

 夜の夜景がキラキラ輝いて綺麗だった。

 おじさんの背中に話しかける。

「空飛んでるの誰かに見られないかなあ」

「だいじょぶ、だいじょぶ。誰も見てないって」

 おじさんは笑いながらしゃべってたっけ。

 おじさん見てる人いたよ! 


 萌が中庭を歩いていると、上級生二人が萌のクラスメイトの男子に言い寄っていた。

「おい、これ食えよ」

「ええ、嫌だよう」

 上級生の一人はトンボを右手に持っていた。

 萌は耳をうたがった。

 何をしているのあの人たち、トンボさんを食べろって、トンボさんが可哀想じゃない。

 萌は虫をひいき目に見る傾向がある。

「ほら口開けろ!」

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