第16話
山の奥まできて、萌の母はとまった。
「鬼ごっこはここで終わりにしましょうか」
箒から降りる。
追いかけていた影はとまり、地面に黒いシミの様になっていた場所からぬっと怪物が現れた。「なに……あれ……」
「魔力喰い(マジツクイーター)だ。魔力を食べて生きてる」
魔力喰い(マジツクイーター)は人間に害をなす存在のため乱獲されて滅多に遭遇できない絶滅危惧種である。
(わざわざ人の多いところに行って、危険を侵すほどに腹が減っていたのだろうか……)
もし人里に来てもすぐに狩られるため、野生の魔力喰い(マジツクイーター)などは人間以外の魔力を持った生物の魔力を食べて、人間に見つからない場所に隠れ住んでいる、それを考えるとなにか妙な感じがした信也だった。
熊が三頭、藪から這い出てくる。
三頭とも一五〇キロはありそうなでかさだった。
萌の母親も使役を得意とする魔法使いみたいだ。
熊を集めるために山の中を巡っていたのだろう。
熊がじりじりとマジックイーターに近づく。
魔力喰いは大きな目を左右違う方向に向けてギョロギョロと熊を観察していた。
その目が萌の母親に向けられる。
でかい口と尻尾から汁を垂れ流していた。
唸り声と荒い息。
三頭同時に襲いかかったが魔力喰いは怯む様子がない。
「しょうがないわね」
萌の母親は右腕を伸ばし左手を添えた。
「我汝呼び、我の前にその姿現せ」
萌の母の横の空間からライオンと虎が各三頭飛び出した。
六頭が魔力喰いに食らいつく。
熊とあわせて九頭が一匹に襲いかかる。
魔力喰いは身動きがとれず、大氣が震えるほどの咆哮をあげる。
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