第13話

 壁はアイボリー色で温かみがある。

床は毎月ワックスを塗り替えているみたいでテカテカしていた。

 薬品の匂いなのだろうか、どこの病院に行っても似たような匂いが漂っている。

 この町で一番大きな病院。

 萌の母親は意識不明の重体だった。

 命に別状はないようだが意識が戻らない。

 親族以外面会できない状態だったが、親族の誰とも連絡が取れず、信也は関係者ということで都合良く、病室に入ることができた。

 呼吸器をつけていた母親を見て、萌は泣きじゃくる。

 お母さんお母さんと何度も泣いていた。

しばらくしてやっと萌が落ちつきだしてきた頃に、

「じゃあ、お母さんと少し話でもするか」

 と信也は言った。

 隣を見て、

「そんなことできるの?」

 と萌が言う。

「誰だと思っているんだ、おじさんに任せなさい」

 信也は萌の手を握り母親の腕に触れた。

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