第9話

信也の部屋は2DKの比較的、新しめで綺麗なところだ。

 マンションに着くと、萌を風呂に行かせて、萌の服を洗濯し、乾燥機に突っ込んだ。

 乾かしている間、萌におじさんのシャツを着ててと信也は言った。

「おじさん、これ臭いよ」

「ごめんな、我慢して」

 萌は苦渋の表情を浮かべ、

「ぐざい」

 と何度ももらしていた。

 年は取りたくないな。

 とほほ。

 申し訳ないなと思いつつ、信也も風呂に入り終わって、萌の服も乾いた後、萌は臭いシャツ着たからもう一回お風呂入ると言って浴室に行った。

 浴室に向かう少女の背中を信也は無言で見つめていた。

(悲しいものだな……)


 朝ご飯を食べに二人は店に向かう。

 信也は、喫茶店を経営している。オーナーだ。

 店は木彫の温かな雰囲氣で、掃除は隅々まで行き届いている。座席数はそんなに多くはない。

 ガランガランと入り口のドアベルが鳴る。

「おはよ」

「おはよ」

 雇っている店員の舞にあいさつをする。

 萌も続いて店内に入る。

「おはようございます……」

 信也の後ろで小さな声で萌が挨拶した。

 舞を上目遣いで見ている。

「誰その子?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る