第3話 仕事と仲間への感謝を感じていた!

 その時、誰かが叫んだ様に聞こえた。

一瞬意識が落ちたのだと思う。

『お前ら!その辺にしておけよ!』

『うるせえなぁ!次は誰だ!』とその声の方を見てリーダーの動きが止まった。

『ケンジさん!・・・』と驚いてかなりビビった様子でその男の方を直立姿勢で見ていた『ヒロシ君も随分とヤンチャな事してくれる様になったんだね!』

両側でオレを掴んでいた2人が『てめぇ〜!誰に向かってそんな口叩いてんだ!』と凄むとリーダーがそれを制して『バカヤロー!お前ら黙ってろ!』と言うと歯を食いしばって、『すいません。ケンジさん!』と頭を下げるとその後頭部をなぜながら『ヒロシ君、ヒロシちゃん後輩ちゃん達の指導が!教育が!』ぱんぱんと軽く頭を叩き、顔を上げさせ目つきが変わり顔を近づけると『テメェ〜がこんなんだからガキ達の態度が悪いんじゃねぇのか〜!違うか〜!』

『す・・すいませんでした。』

『分かったらお前らのせいで人集りが出来て、ゴミを捨て散らかして行った人もいるからこの辺のゴミを片付けて、綺麗に掃除してさっさと帰れ!分かったな!』

リーダーは直立不動で『ハイ!分かりました。』とだけ言うと2人を連れてゴミを拾い始めた。

私が目を覚ますと休憩室で横になり寝かされていた。

やっぱり夢を見ていたんだなと思っていたが、頭の上の方に人の気配を感じて立ち上がろうとすると体に痛みを感じた。

『大丈夫!』と言う声に聞き覚えがあった。やっぱりと思った。

『君は何でここにいるの!』と言う『何言ってんの!あいつらに殴られて倒れたのを私とあの人でここまで運んだんだよ!結構重かったんだから!』と言うと『あの人って誰の事?あの年配の人?』

『アンタの仕事先の人!若い人だったよ!』『そう言えばケンジさんて呼ばれてた!』『誰だろう?』やはり夢では無く現実に起こっていた事の様だ。

『その人、凄い人らしいよ!昔、この辺りを仕切っていた暴走族の総長だったんだって!その後もあるカタギじゃ無い組織に入り凄かったらしいよ!』

『何でそんな事、君が知ってるんだ!』

『あの特攻服のリーダーが言ってたんだ!』『だから何でアイツらと話ができたんだ!』『オジサンがやられてる所にあの人が来てアイツらを止めて辞めさせたの!それで掃除までさせてたの!その時に聞いた話です!』『分かりました。どうもすいませんでした。』

『それで君は誰?何で!いつまでここに居るの?』

『私は千明!河合千明 23歳!丸井運送の配送兼事務係担当!以上』

『オジサンだって名前くらい聞かせてよ!でもどっかで見た覚えがあったんだよねー!』『他人のそら似って言うの!私は松井孝(タカシ)まだ51歳!会社員!以上』と真似してみた!

『何がまだよ!もうでしょ!でも体操でもやってたの?』

『どうして!』

『どうしてって!そうじゃなかったらサーカスにでもいたの?でなきゃあの身のこなしや宙返り!タダもんじゃなかったよ!』

『やっぱり!そう思う?思うよね!私もどうしてあんな事が出来たか不思議でしょうがないんだ!』

『またまた!ご冗談をいつも練習してるんでしょ〜!』

『いいえ!』と首を振った。

『まさか!初めて?なんて事はないでしょ?』

『高校の体育の事業依頼!』

『うっそだぁ〜!』

『真面目な話です。』

ピーピーと彼女の携帯が鳴った。

『松井さん!呼出が入ったから、まだ話があるからまたここへ連絡して!必ず!ではよろしくです。お大事に!』と名刺を渡された。

時計を見ると4時を過ぎていた。

大分やられたな!と痛みを堪えて立ち上がりフードコートに向かった。

そこへ着いて朝指示をしてくれた澤井さんを探した。

どこにもいないので困っていると『松井さん?』と後ろから声を掛けられ、振り返ると年配の女性が立っていた。

制服を見てお互いに同じ会社の清掃の職員である事は分かっていた。

『あなた6時までの勤務だよね!そうしたら私はこれから休憩に入るから後2時間通しで頼める!大丈夫そうよね!』と足元から身体を見上げ、『ケンちゃんが大分疲れてる様だから無理させないで!って言って帰ったから!』『帰った?』

『ケンちゃん昨日の夜からだったから!昼までで上がりの予定だったのに今日は珍しく残ってたみたいだから!』

『澤井さんて!ケンちゃんて言うんですか?』

『そうよ!澤井研二!昔ジュリーっていたでしょ!一字違いだけど何かしらの雰囲気似てるのよねぇー!』

『やはりケンジとは澤井さんだったんだ!』『河合千明の話は間違っていなかった!』『そう言えば、私と前に会った事がある気がするって言っていたけど、丸井運送は戸田市美女木って事は思い当たるのはあそこだけだ!』

しばらくするとフードコートの奥の方でまた人集りが出来ている場所があった。

今度は先程の様なトラブルでは無い様だ。段々と身体の変化にどう対応するのかが分かって来たので神経を集中させるとかなり遠くで離れてはいるがその中心部にどんな人がいて何を話しているかまで分かる事が出来ていた。

『200円のスクラッチ20枚下さい!まずはこれで今日のラッキー度合いが分かる!結構いい気がする!』

周りの人だかりが女性の声が多くソリマチ!ソリマチ!と話す声が聞こえていた。

声のトーンと話し方でそこにいるのが反町隆史だと分かった。

宝くじ売り場付近にその他に2〜3人いる様に思えた。

名前が出て来ないが顔は浮かぶ変な顔の頭の髪が薄い俳優。

あとはよく知らない声だった。

この2人って事は『相棒』だな。

テレビ朝日!あの番組か?と気にもしなかった。

ただ迷惑がるお客様も沢山いた様だ。

なぜかと言うと彼らと撮影スタッフが移動する周りを沢山の人集りが付いて回るせいで通路は塞がれ、時間がなくてフードコート内のお店で食事を頼みたい人達はそれが出来ずにいた。

また撮影スタッフを含めタレントが座る席が50人分くらいヒモで囲われキープされ、使えない状況になっていた。

そんな中、気にせず仕事をこなしていた。周りを囲むスタッフの言葉だけは気になっていた。

それとプロデューサーみたいな人だろうか『邪魔な奴はどかせ!どっかへ移動させろ!』と言っていたのが分かった。

その後も周りの監視するスタッフが『どいて!どいて!もっとウラをまわって!』って、お前らが申し訳ありませんだろ!だんだん我慢ならなくなって来た。

中での撮影が終わったのか用意してあった席には戻らず外へと向かった。

途中また宝くじ売り場へ向かっていた。

私もゴミを片付けて回る為、近くを通り掛かるとさっきのプロデューサーとタレント達が話している後方を通りかかった時、黙ってはいられなかった。

『皆様お騒がせしました。ご協力ありがとうございました。位の挨拶もないのかよ!呆れるよな!』と大声で聴こえる様に言ってやった。

だか後片付けのスタッフを残し他の関係者は何処かへでていってしまった。

私も18時を過ぎて最後の片付けが終わったので年配の女性職員さんに挨拶して帰ろうとした時、聞こえて来た『先程は撮影の為、お食事や御休憩中の皆様へ大変ご迷惑をお掛けしました。申し訳ありませんでした。またご協力して頂きまして心より感謝致します。ありがとうございました!』

反町隆史が1人だけでそう伝えると一礼して周りを少し見回していたが宝くじ売り場の方へも挨拶してすぐに立ち去って行った。

もしかしたら私の事を探していたのかもしれないと思いやっぱりポイズンで!反町隆史はイカしてる奴だなと少し感心した。

今日は色んな事が起きた1日だったと帰りの車の中で記憶を捲らせていた。

あんな面倒だけどあの人達がいるお陰で普段私たちは安心して食事と休憩を楽しめていたんだなと家族で出かけた時の事を思い出して感謝の気持ちが湧いて来ました。

この新たな感覚と身体のコントロールが出来る様になり原因もあの時の息絶え絶えだったアゲハ蝶を触ってしまった時からこの力が自分の身体の中の遺伝子に変異を齎したのだと確信していた。

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