2
わたしは思わず月を撮影してみると、我ながら素敵な写真だったので友人に見せびらかしました。すると友人からの反応も良く、それから私は風景の写真も撮影するようになりました。今まではスマホひとつで撮影していたのですが、カメラも買うようになり、いつしか写真撮影のためだけに一人旅にも行くようになりました。風景の写真を撮るときは、いつもあの時の夕焼けに浮かぶ月のように、綺麗だと直感的に思った瞬間を切り取るような気持ちでした。
八月に沖縄に旅行へ行った時の話です。この旅行も写真撮影のための一人旅でした。
本島だけではなく、宮古島や父島などの小さな島にも行きました。
たくさんの写真を撮影しました。何気ない道路の写真から、大海原の写真、観光客の笑顔、夜空の写真、沖縄料理の写真や店員さんの笑顔も撮影しました。どれもが心を揺さぶられるものだったので、撮影している時、わたしはとても楽しかったです。
とても暑かったけれど爽やかで、素敵な写真もたくさん撮れて、美味しいタコライスや沖縄そばもたくさん食べることができて、大満足の旅行でした。
さて、自宅に帰ってきてからのことです。
わたしはカメラの写真をプリントしてみました。
すると、宮古島で撮った写真には、病いにでも冒されたかのように痩せ細った体躯の男が写っていました。もちろん、こんな写真を撮ったおぼえはありません。男の目は衰弱しきっていました。さらに、他の写真はなんてことはないのに、その写真だけは熱を帯びていました。
「わっ」と小さな悲鳴をあげてしまい、その写真を手放してしまいました。
その後、しばらく動くことができませんでした。足が震えていたからです。
水を飲み、落ち着いた頃には午前一時。友人に電話をしたかったのですが、もう遅い時刻でした。
不安の中で夜を過ごしました。写真は机に置いたままです。目が覚めた時には、あの写真がなくなっていてほしいと思い、ベッドの中に潜りました。しかし、なかなか眠ることができません。当たり前と言えば当たり前です。わたしはこれまでもたくさん写真を撮ってきたのですが、あれほどまでに不気味で、不安に襲われるような写真ははじめて撮影したからです。
結局、一睡も出来ずに翌日を迎えました。
机の上にある写真をおそるおそる見てましたが、やはりあの宮古島の写真には、あの衰弱しきった男が写っていました。友人に連絡してみることを考えましたが、やはりその決心はつきませんでした。今の時代、パソコンで心霊写真をつくることは誰でも容易にできるし、友人を巻き込むようなことはしたくなかったからです。
わたしは悩んだ末に会社を体調不良で休むことにしました。何度見ても見慣れることができないこの写真と向き合わなければいけないような気がしたからです。ただ、この判断は正しかったのかどうか今でもわかりません。だからこそ、あなたに伝えているのです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます