第1話 出会い
「おい、ーーーん」
「ーー兄ーーん、大丈ーー??」
「おい、兄ちゃん、大丈夫か??」
「はっ!え、あ、え?はい大丈夫??え?」
要が目を覚ますとそこには広々と広がる草原にまるで時代錯誤の馬車、そして色とりどりの髪色と瞳をしたドイツ人らしき筋骨隆々の男たちがいた。
「こんな街道の横で寝てるとはなかなかやるやつだなぁ!」
「ダヴィンズ、そんな身元のわからない方放っておいて、早くへヴィンドまで向かいませんか?」
「おいおい、そりゃないぜ!こんな小っこいガキここに置いてったらゴブリンの餌にされちまう!」
「そりゃそうですけども」
ゲラゲラと笑う目の前の金髪のおじさん?お兄さんとオレンジの髪色のおじさん…?お兄さん...?そこは置いといて男の人達がやれやれといった表情で首をすくめる。
「おい、兄ちゃん どこから来たか言えるか?ほら名前とか?」
ダヴィンズと呼ばれた金髪の男の人が僕に問いかけてきた。
「えっと、日本から来ました、作坂要(さくざかかなめ)、15歳です。」
僕は多分困った表情をしてたんだろう、二人は顔を見合わせた後、
「ニホン?聞いたことねえ地名だなぁ、サクザカカナメか長いからサクザカって呼べばいいんだな?それともカナメって名字持ちの貴族様か?」
「あ、いえ、要が名前で作坂が名字です。貴族ではないですけど…」
「そうなのか、ここオーランドでは名字持ちは貴族様だけなんだよ、それにしてもこんな小っこいのに15歳なのか!」
オーランドという地名はアメリカにあったと思うけど、少なくとも僕の知っているオーランドとは雰囲気が違う。そもそも馬車なんか通ってないだろうし、あそこは観光名所としてビルの一戸や二戸建ってないとおかしいのに目の前に見えるのは草原のみだ。
もしかして、もしかすると学校で森田君が言ってた異世界転生ってやつじゃないだろうか?
最近流行っているからって僕にも何冊かおすすめの本を貸してくれていたのに!!
ほら、目の前がスパークして分からないとこに転移してるとかそのまんまじゃないか!テンプレとやらだと神様に挨拶するはずなんだけど、それはいいんだろうか?
僕がうーーんと考え込んでいるとダヴィンズさんが
「もし迷い人だったら街に着くまでは面倒見てやろうか?街に行ったら仕事なんていくらでもあるだろうし」
「迷い人?って何です?」
「ごくまれに別の世界から迷い込んじまう奴らのことだな。有用な知識があれば国に守ってもらえるし、スターダスト商会の俺らが知らない土地から来てるだなんて迷い人だろ!」
「……多分迷い人だと思います、もし良ければいいですか?」
安全かどうかはわかんないけど、わざわざ街道にいる僕を起こしてくれたし、何より街の場所も分からない、常識も分からない僕には目の前の人に縋るしか方法はないだろうと結論付け頭を下げた。
「おうおう!困った時はお互い様ってやつだ!いいよな?イーサン!」
ダヴィンズさんは後ろをくるっと向きオレンジの髪の男の人に確認した。
「ダヴィンズがいいと言うなら俺はそれに従うよ」
「おう!俺はダヴィンズ、スターダストって名前の商会の商会長!で、こっちがイーサン!俺の親友兼帳簿係!よろしくな」
そういうとダヴィンズさんは握手してくれた。
「はい!よろしくお願いします、ダヴィンズさん、イーサンさん!」
「おう!お前ら!出発するぞ!カナメも乗りな!」
そう声をかけると馬車の後ろにいた護衛らしき人達がぞろぞろと配置に着いた。
「みなさん、よろしくお願いします」
そう言って馬車に乗る。
さぁ、長い馬車旅の始まりだ。
「へぇ!カナメのいる所は魔法ってものがなかったのか!」
大きく驚くダヴィンズさん。
「それはなかなか興味がありますね」
コクコクと頷くイーサンさん。
大体4時間(この世界では2刻というらしい、街だと2時間おきに鐘が鳴るらしいから)馬車旅を始めてから体感数十分、僕はダヴィンズさんにこの世界について色々と訪ねていた。
そして、気になった点がひとつ。先程護衛らしき人たちがいたのになぜ誰も剣らしきものを持っていなかったのか不思議だったのだ。
何故かと聞けば魔法でいいし、剣は切れ味が悪くて使いづらいとの事だった。
「動物の剥ぎ取りなんかはどうするんです?」
「それは動物に関しては大抵狩猟ギルドが、魔獣の類は冒険者ギルドの管轄で、剥ぎ取り専門の部門があるからそこの秘伝のナイフとやらで剥ぎ取るらしい。もしくは魔法操作に長けたやつが魔法でちょちょいとやるんだよ」
と、ダヴィンズさん。
「大抵は剥ぎ取り含めてギルドが一括で買取しますから、剥ぎ取られた状態で持ってくるよりも得られるお金は減ってしまうんですけどね」
と、イーサンさん。
「へぇー材質は何で作られてるんでしょう?」
「安いのは加工の出来る死んですぐの動物の骨、高いのは魔法金属という金属らしいが加工が難しくてナイフみたいちっこい武器にはあんまり向いてないらしいな」
「え?鉄とかで作らないんですか?」
「テツ?なんだそれは?」
ええ、まさかの鉄さえない世界??嘘だろ!
「大抵は魔法でどうにかなるからな、剥ぎ取りだって何だって魔法操作が得意なやつなら魔法でできるだろうし。」
「はぁ、僕でも魔法って使えるんですかね…」
「迷い人について詳しくないからなんとも言えんが、使えないと言うやつは聞いたことがないからおおよそ使えるだろう」
さすがに良かった。生活の根本にあるものが使えないとかなんて言う不自由だと思ってしまった。
「魔法ってのは、イメージと与える魔力によって変わるんだ。例えば風の玉を出したいとする。風の玉を想像して、手のひらから絞り出す感じでな、で魔力を少し込めて投げる!とああなる訳だ」
ぽいっと手の平の上に作った緑の球体を木の窓枠から外に投げる。
外を覗くと、大きな木の根元に丸く木皮が無くなってる部分があることに気づいた。
「おお!」
「これが魔法の基礎ってやつだ。あとはクリーン(清掃)だったりファイア(点火)と呼ばれる生活魔法だな、これは唱えるだけで出来るお手軽魔法だ、威力はないけどな」
とダヴィンズさんが。
「威力はないと言っても魔力量が多い人と少ない人では生活魔法の範囲や威力にも差は出ますけどね、魔法量が多い人の点火はかなり大きな火が出るんですよ」
とイーサンさんが答えてくれた。
「そうなんですね」
「馬車の中だと威力が抑えきれないうちは大変なことになるから、次の休憩になったら教えてやるよ」
「ありがとうございます!」
「次の休憩は1刻半後ですからね」
「はい!」
魔法だなんて未知の力、恐れはあるけど憧れの方が強い。森田くんの家に遊びに行った時に遊んだゲームでもメラゾ〇マとかカッコイイ魔法ばっかりだったし!
その後も質問を続けること、1刻半ようやく休憩に入った。
分かったことはお金は魔法金属と呼ばれる魔法で加工できる(といっても国の専門技術が使われてお金を一般人が加工すると罪になるらしい。日本と一緒だ。)金属でできている。おおよそ100円が1ランドと言われていて100枚ごとに金属が変わる。
見せてもらったら、表面には王様らしき人の姿が描かれていて、裏面にも細かい紋章らしきものが描かれていた。
そもそも魔法金属を加工するというのはなかなか難しいらしく、細かく加工できる人は国に管理され、国の下で働く決まりがあるんだとか。
大雑把にでも加工できると生産職の中では天職と呼ばれるらしい。
古代技術で高価なものの数え方に金色、銀色、銅色が使われているからそれにあやかって、
1ランドが1銅貨
100ランドが1銀貨
10000ランドが1金貨
という使われ方をしてる。
その下に10円単位、0.1ランドで鉄貨というというものが庶民の中では使われてるけどあまり信頼がない貨幣らしく大量に使うと迷惑がられるらしい。
大体色は想像する色と同じで金貨はちゃんと金色をしていた。
鉄や合金がないなんてと思ったが、大抵は魔法で何とかなるから技術が進んでいないらしい。
もしこの世界にも鉄があるなら、おじいちゃん直伝の自給自足の精神で加工してみたいな、なんて思ったりした。
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