30b.後輩とデート?(後)


水着を買ってから昼食を済ませて、二人で映画を見る。


選んだのは漫画原作の実写映画だったのだが、予想に反してそこそこ面白かった。


「面白かったですねー」


「そうだなー、やっぱり実写化はギャグに全力してるのが一番相性いい気がする」


「無理に原作に寄せようとすると無理が出る気がしますねー」


「そもそも成人に高校生役やらせようとするのが多すぎるんよなー(個人の感想です)」


なんて話をしながら次の目的地のゲーセンに入る。


デートと言いつついつもの行動範囲じゃねーかなんて言ってはいけない。


いいんだよ、趣味が合うかを見るのが目的なんだから。


そんな言い訳をしていると、後輩が筐体のひとつに興味を示す。


「伊織先輩、あれやりませんか?」


と後輩が指さした先にあるのは十字パネルのついたダンスゲーム。


「小海はあれやったことあるのか?」


「前に何度かやったことありますよー、学校帰りに友達と勝負したこともありますし」


それは絶景だったろうな。


学生服の短いスカートでならんで踊っている小海とその友達を想像する。


絶対パンツ見えるじゃん。


「じゃあ折角だし勝負するか」


「いいですよー、何か賭けましょうか」


なんて乗り気の後輩に一旦ストップをかける。


「いうて俺はこのゲームそこそこ遊んでるからな。先に小海が好きな曲で練習していいぞ」


「本当ですか?あとで後悔しても知りませんよ?」


俺の提案に意気揚々と筐体の上へと登る小海。


まあ、ハンデっていうのは嘘だけど。


本気でやったら万が一にも負けないしな。


本音はこれ、ということで選曲をしている後輩の後ろに立ってその姿を眺める。


当然短いスカートで踊るなら、その中身が見えるはずだ。


曲が始まって後輩がポンポンとリズムよくパネルを踏んでいく。


結構上手いな。


そして↑↓同時踏みの後に←→が来て、自然に身体が跳ねる。


見え、見え……。


見えねーっ!!!


はぁ……、なんかドッと疲れてしまった。


「どうしたんですか、伊織先輩?」


曲を終えた後輩がこちらを見下ろす。


「あとちょっとで見えそうなのに惜しかったんだ……」


「なにがですか!?」


パンツ。


「先輩のえっち」


「それだけ小海を魅力的だと思ってるってことだ」


「そんなこと言っても誤魔化されませんからね?」


だめかー。


「もー、変なこと言うから踊りづらくなっちゃったじゃないですか」


「小海のスカートは伸びないのか?」


パンツが見せたくないならスカートを伸ばせばいいじゃない。


「スカートは普通伸びませんけど」


「女子高生のは伸びるだろ」


「あー」


制服のスカートを腰の部分で折り返して、丈を上げる方法がある。


まあ私服じゃほとんどやらんだろうけどな。


「みんなやってるわけじゃないですけどね」


「小海は?」


「秘密です」


なんて答えは実質言ってるようなもんだったけど、まあ秘密ということにしておこう。


ちなみに勝負は俺の圧勝だった。




「伊織先輩、これやったことありますか?」


「んー?」


洋服の裾をくいっと引っ張られて聞かれたのは、横に並んだ9個のカラフルなボタンがついた筐体。


前列5つ奥列4つの互い違いに並んでいて、液晶の上から降ってくるのをタイミングよく叩くやつだ。


「まあ人並みにはな。やってみるか?」


「はいっ」


ということで1クレジットを入れて画面が切り替わる。


まずチュートリアルでゆっくり一つずつ落ちてくるノーツにあわせて後輩がボタンを押す。


「えいっ、えいっ、わっ」


上体を前のめりにして両手でボタンを押す姿はさながらもぐら叩きのようだ。


まあこのままでもいいんだけど、折角なのでちょっとだけやりやすいように教えることにする。


「とりあえず背筋伸ばして肘を支点に動かす感じで」


「ひゃっ」


後輩の後ろに回って方を掴んで背筋を伸ばし、そのまま曲がらないように腰を両側から抑えると後輩が変な声を上げるが気にしない。


「頭は固定して視界は判定ラインの上を広めに」


後ろから指で顎をくいっと上げて固定すると、姿勢はさながら身体測定の身長計測みたいだ。


本当は画面上部を見て全体を把握する方が高難易度に対応しやすいんだけど、まあ後輩は初心者だしな。


そのまま後輩の後ろにくっついて曲を選ぶ。


「小海は真ん中のボタン3つだけ押してみ」


「それより伊織先輩、近いです」


「気のせいだろ」


「絶対気のせいじゃないですよっ!」


後輩の抗議を聞き流してる間に曲が始まって上からノーツが降ってきたのでポンポンと叩いていく。


真ん中ボタン3つでも結構苦戦してる後輩が微笑ましい。


その真後ろに俺からは画面が上半分しか見えないのでここに重なったら押してくださいってラインも見えないのだが、まあ小海に合わせたこれくらいの難易度なら余裕でタイミング取れるので問題ない。


小海の髪、良い匂いするな。


「小海の髪、良い匂いするな」


「ふえっ!?」


変な声を上げた後輩が、ボタンを2つ同時に押す。


「ちゃんとノーツが落ちてきたら押すんだぞ」


まあこの難易度だと空BADついたりはしないけど。


「そういうことじゃないんですけどー!」


という後輩の叫びは俺に華麗にスルーされた。


音ゲー楽しいなー。




たまには俺が後輩を困らせてもいいよね。




「んー、遊びましたねー」


「そうだなー」


買い物を終え外に出て、ぐっと伸びをした後輩の立派な胸が引っ張り上げられるのを横目に見ながらそんな生返事を返す。


「ゲームセンター楽しかったですね。セクハラされましたけど」


「セクハラじゃないぞ、スキンシップだ」


「それは私が決めることなんですよ?」


「んー、嫌だったか?嫌ならもうやらないが」


言うと、後輩が怒ったような表情をする。


「そういう言い方は、ズルいじゃないですか」


表情がころころ変わる後輩もかわいいよな。


「俺はずるい男なんだよ」


「私の乙女心が今傷つきました。なのでお詫びにプールに連れて行ってください」


「今から?」


「今からだとナイトプールになっちゃうので、また後日でいいです」


夜にプールに行くこととナイトプールに行くことは別の意味だと思うんだが、まあいいか。


「でもプールかー。日焼けしそうで嫌だな」


「そんな女子みたいなこと言ってもダメですからね」


まあ水着買った時点で覚悟はしてたんだが。


買ったのに使わなきゃ金の無駄だしな。


とはいえ、プールという陽キャの極みなスペースに行くのに腰が重いのも事実なわけで。


「じゃあ小海が朝起こしに来てくれたら行ってもいいぞ」


「どんな理屈ですか?」


「一人だと家から出たくなくなるの目に見えてるからその対策だ」


実際に現地に着いたら着いたでそこそこ楽しめるとは思うんだけどな。


そこに行くまでに必要な気力が高いという自発性皆無の駄目人間な精神なだけで。


「んー、わかりました。じゃあ朝起こし行くのはめんどくさいのでモーニングコールだけしてあげます」


「そうやっていうとなんだかカップルみたいだな」


「私はもうカップルになってもいいんですよ、先輩?」


「それはまた今度な」


「むー」


不満気だが、まあそこは納得してもらうしかない。


「じゃあ、水着楽しみにしてるな」


「私も伊織先輩の水着楽しみにしてますね」


「それは楽しみにしなくていいやつだ」




ということで、次の予定が決まった。

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