13.女友達とお風呂とベッド
夕食から帰ってきて、葵と並んで洗面所で歯を磨く。
二人で並ぶと若干狭いが、お互いに譲る気はないのでしょうがない。
ちなみにパスタ屋はちょいと遠いけどまた食いに行こうと思える良い店だった。
「じゃあ俺風呂入るから」
「いや、あたしが先に入るから」
この家には譲合いの精神というのもが欠けているのかもしれない。
まあその原因の50%は俺なんだが。
「じゃーんけーんぽい」
負けた。
「ふぅ……」
湯船に肩まで浸かってから息を吐く。
お湯の水圧に緩く身体を圧迫される感覚と、熱伝導で解されていく体温が心地良い。
湯気と一緒に頭の中までぼうっとしてくる気がするがそれはたぶん気のせい。
癒されるわー。
なんて思いながらふと目の前の棚に二つ並んだシャンプーを見る。
右が葵用、左が俺用。
これが最初に並んだのはどれくらい前だったろう。
最初に歯ブラシが増えて、次がシャンプーで、最後にカラーボックスの中身の着替え類、だったかな。
本当に最初だけオイオイオイと思ったけど、すぐにまあいいかと思ったっけ。
俺に彼女が出来たらどうするんだよ、って聞いたとき、それ正気で言ってるの?と返された時はこいつ……と思ったけど。
まあ実際あれから出来てないし出来る気配もないんだが。
他所から見れば変な関係でも、俺にとっては自然な関係で。
別に男女の友情なんて立派なものを感じたことはないけど。
お互い恋愛感情がなくて、気が合うから遊んでるだけな今の距離感が嫌いじゃなかった。
オナニーしたくなった時だけ誤魔化して追い返すのは若干面倒だけどな!
閑話休題。
……。
そもそも本題ってなんだったっけ?
バラエディ番組が終わってCMに入り、次の番組が始まったところで気づく。
「日付変わってるじゃん」
0時をまたいで今日は翌日。
つまり定期購読している漫画雑誌が更新済みだ。
漫画は紙派か電子派かは個人的にも一家言あるが、それはそれとして雑誌の0時配信は大きなメリットだった。
ということでベッドに横になってタブレットの電源ボタンを押すと、唐突に腰の上に荷重がかかる。
「ぐえー」
人の上に無遠慮に乗ってきたのは言うまでもなく葵。
「一人で読もうとするんじゃないわよ」
「お前は後で読めばいいだろ」
「なら伊織が後から読めばいいじゃない」
「断る」
そもそも課金してるのも俺だし。
一緒に見ると好きな順番で読めないので若干面倒なのだが、葵も譲る気もなさそうなのでしょうがない。
にらみ合ってる時間の方が無駄だしな。
「とりあえず上から降りろ」
葵が上から降りて俺の横に横になるので、タブレットの位置を半分ずらして二人で見れるようにする。
お互い肩がくっついて若干邪魔な感じなのはしょうがない。
流石に肩をくっつけてると一人用の布団でも幅が足りなくなることはないのは救いだけど。
「じゃあ最初からな」
「わかったー」
読む順番でもう一回交渉会議するのも面倒なので巻頭から。
順番に捲っていくと、ラブコメ、ギャグ漫画、バトル漫画、お互いに読んでない漫画、ラブコメと消化していく。
その度に、悶えたり笑ったり、息をのんだり盛り上がったりが肩越しに伝わってくる。
まあ俺も似たようなタイミングで同じ反応をしてるからお互い様だけど。
漫画の趣味が完全に一致してるわけでもないけど、それでも同じ漫画を読めば大体同じ反応になるのは良いんだか悪いんだか。
知らない漫画を薦められても基本的に面白いのが便利だからまあいいか。
ということで雑誌を読み終えてそろそろ0時30分。
「んじゃそろそろ寝るかー」
明日は朝イチなのでそろそろ寝た方が良い。
というか本当ならもっと早く寝た方が良い。
まあ明日の講義優先で早寝する奴なんていないけど。(俺の周囲の駄目人間ども調べ100%)
「それじゃ、おやすみー」
「いや、お前は自分の部屋帰って寝ろよ」
「いやよめんどくさい、それにもう寝巻きだもの」
まあ寝巻きで外に出るのは防犯意識的にも良くないが……。
「じゃあせめてソファーで寝ろよ」
そして家主にベッドを譲れ。
「それもやー」
こいつ自由すぎる。
なんて俺の反応も気にせずに、もう完全に寝るモードに入っている葵は怠そうに言う。
「もうあたしはここで寝るから、伊織もここで寝たらいいじゃない」
「それは流石に狭いだろ」
「んん~~~、じゃあじゃんけんで……」
「しょうがないか」
ここまで譲歩しただけでも、寝る前の葵としては十分頑張った方である。
いつもは気付いたら寝てて起こしても起きないしな。
というかね、別にソファーで寝てもいいんだけどね。
一応の所有権を定期的に主張していかないとね、ここが俺の部屋だってことを葵に完全に忘れられそうなのよね。
流石にそうなったら困る。
いや、そんなに困らないけど。
でも、ちょっとだけ困る。
「じゃーんけーん」
パー。
葵はグー。
やったぜ。
「んも~」
すごくすごく怠い牛のような声を出した葵が、それでももそもそとベッドから降りてソファーに横になる。
「明日は負けないから」
目をつむったまま言った葵がそのまま熟睡モードに入る。
いや、明日もじゃんけんするのは決まってるんかい。
なんて思っても、抗議する相手はもう聞いていないので、大人しく部屋の電気を落としてベッドに横になった。
布団あったけ。
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長くなったので分割してみるテスト。
書いてる方はわからないけど、あんまり毎日更新で文字数多いと追うの大変だったりするんですかね?
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