第61話 生徒会長に頼む
『コンコンッ』
潤一は学内のとある教室の戸をノックした。
「はい!どうぞ!!」
室内から返答があった。
潤一は胸中で心臓をバクバクさせながら、右手で戸を開放した。
「どうしましたか?何かありまし・・・。えっ!潤君!!」
室内に身を置いていた1人の生徒が言葉を詰まらせ、驚愕して目を見開いた。
潤一は今現在でも多大なる緊張感を覚えながら、意を決して言葉を発した。
「・・久しぶりだね。瑠奈ちゃん」
潤一は現生徒会長である瑠奈に対して不器用な作り笑いを浮かべた。
「う、うん。・・・そうだね」
瑠奈は困惑した表情を作るも、平静を取り戻したのか決して目を逸らさず、潤一に向けて応答した。
簡単な会話が成された後、室内には静寂で重い沈黙が遠慮なしに創造された。
それには理由がある。
潤一は瑠奈の告白を断ってから、彼女と1度も会話を行っていなかった。
校舎で偶然すれ違っても、お互いに話し掛けることはなかった。
そのため、今回、彼らは久しぶりに会話を交わした。
「いきなりごめんね」
潤一は愛莉を救うことを考え、勇気を振り絞って静寂を打ち破った。
「今回、生徒会室に足を運んだのは、瑠奈ちゃんにお願いがあって来たんだ」
潤一は心底申し訳ない気持ちになりながらも、話を切り出した。
「そ、そうなんだ」
瑠奈は目をキョロキョロさせながら、落ち着かない様子だった。
「いきなりだけど、瑠奈ちゃん!俺を助けて欲しいんだ。今、愛莉の姉が愛莉に危害を加えていて、彼女の心が追い詰められてるんだ。だから、俺は愛莉の姉の仕打ちを止めたい。でも、そのためには情報が必要なんだ」
潤一は長々と気持ちと感情の載った言葉を紡いだ。
「生徒会長の瑠奈ちゃんなら、愛莉の姉である那須遥香の情報を少しでも持っていると思った。瑠奈ちゃんの告白を振った俺がこんな頼みをするのはおかしいと思う。でも、そうしなければ、俺は愛莉を救えないんだ。だから、お願いします!協力してください!」
潤一は瑠奈に勢い良く頭を下げた。
「・・・」
瑠奈は潤一が頭を下げるまでの過程を黙って眺めていた。彼女はそれまで1回も口を開かなかった。
「・・・いいなぁ〜。那須さんは。こんなに優しい人を彼氏にできたんだもんなぁ」
瑠奈はボソッと本音らしきものを漏らした。
「あ〜ぁ。やっぱり、私はまだ、潤君を諦めきれてないんだなぁ〜」
瑠奈は気怠そうに室内の天井に視線を移した。
潤一は瑠奈の様子が気になり、頭を上げた。
すると、そこには微笑を浮かべる瑠奈があった。
「協力するよ。だって、潤君は私の大切な人だから」
異世界でいろいろ経験したら、現実世界で美少女にモテまくるんじゃね? 白金豪 @shirogane4869
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