第59話 開始
放課後、潤一と愛莉は通常どおり共に昇降口に到着した。
潤一はいつも通り靴ボックスからプライベートの靴を取り出し、上靴からそれに履き替えた。
しかし、愛莉はそうはいかなかったらしい。なぜなら、愛莉が昇降口から抜けて来なかったからだ。
「あれっ。ない!?」
愛莉は靴箱の中を覗きながら、困惑した表情を浮かべた。
愛莉は助けを求めるように潤一に目線を移動させた。
「くっ。早速かよ!」
潤一は事の状況を理解し、犯人と推測できる遥香に対して多大なる怒りを覚えた。
そう、遥香は、宣言通りに愛莉を苦しむ行為を実行したのだ。
今回の靴を隠したのは一発目の挨拶みたいなものだろう。
潤一は昇降口あたりをひたすら探索した。
近所の水道、ゴミ箱など、かなり詳細に探した。しかし、残念なことに、愛莉の靴は見当たらなかった。
最終的に、靴を探すために、校舎の4階から下層に向かって足を運んだ。
その結果、2階の職員室の近くに設置されるゴミ箱の中に愛莉の靴が捨てられていた。
その後、彼らは暗い雰囲気を醸し出しながら、それぞれの自宅への帰路に進んだ。
次の日の早朝。
愛莉は岡西中学の制服を身に纏って、1人で自宅から学校に登校していた。
学校が見えてきた。
愛莉は同級生よりも30分ほど早く学校に来るため、正門前には2人の生徒以外存在しなかった。
「おーおー。来たなー。すげぇな遥香の言う通りじゃんよ」
正門の前に佇んでいた背の高い2人の男子生徒が嫌らしく不気味な笑みを作りながら、愛莉に近づいてきた。
「な、・・・なに?」
愛莉は身に覚えの無い男2人が歩み寄ったことにより、内心びくびくしているように狼狽えた。
「あぁ?わからねぇか?お前を無理やり連れ去って、おかすんだよ!!それしかねぇだろ。お前さんの姉である遥香がな、女に飢えている俺達に優良物件があるって教えてくれたんだよ。そして、おかしてもいいことも許可してくれたんだよ」
男の1人はにまにましながら、愛莉の豊満な胸をエロい目で眺めた。
「み、見ないで!」
愛莉は胸の前で両手をクロスし、男達に見られないように身体を斜めに背けた。
「わかったよ。その代わり、後からたっぷり隠れた旨を見せてもらうわ」
男達は愛莉の腕を強引に掴んだ。
「きゃっ!?や、やめて!!だ、だれ・・・むぐうっ」
愛莉の腕を掴んだ男が彼女の口元を完全に塞いだ。
「よっしゃ!車持ってこい!!」
男は抵抗する愛莉の口元と両腕の自由を奪った。
愛莉はなんとかして男に蹴りを入れたが、所詮女子の蹴りである。男には一切ダメージが無かった。
「今から行ってくる!」
もう1人の男が車を取りに行こうとした瞬間、ある人物がそいつの身体を思いっきり蹴飛ばした。
「ギャッ」
蹴られた張本人の男は悲鳴のような声を上げ、数メートルほど宙を飛んだ。
「お、おい!何があった!?」
愛莉の自由を奪った男が危険を感じたのか、仲間の音が居た方角に視線を向けた。しかし、目的の男はその場にいなかった。
「ふざけるな。さっさと愛莉から離れろ」
男を蹴り飛ばした人物は冷酷な声を漏らし、次は高速の回し蹴りを繰り出した。
その攻撃は男にクリーンヒットした。そして、その人物は、とどめに男の服を掴み、柔道の一本背負いを披露した。
男の身体がアスファルトの地面に遠慮なく叩きつけられた。
一瞬で2人の大人の男が倒され、その場が静寂に包まれた。
愛莉は未だにがたがたっと身体を震わせていた。
一方、男達はぴくりともせず、地面に倒れ込んでいた。
「愛莉!大丈夫!!」
男をあっさり打ちのめした人物が愛莉のもとにダッシュで向かった。
愛莉はその人物を視認し、心底安心しきった表情を示した。
そう、先ほど愛莉を助けたのは彼女の彼氏である潤一だったのだ。
潤一は愛莉のもとに到着するなり、瞬時に彼女を抱きしめた。
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