第54話 1人暮らし


 次の日、愛莉は学校を欠席した。


 放課後、潤一は愛莉が教室に来るまで待っていたが、何分経っても彼女は現れなかった。


 そのため、潤一は昇降口で靴に履き替えるなり、SNSのLiMEを使って愛莉に連絡を取った。


潤一『今日、どうしたの?学校休んだの』


 瞬時に既読が付き、愛莉からトークの返信が成された。


愛莉『うん。休んだ。ちょっと体調が悪かったから』


潤一『そうだったんだ。すぐにお見舞いに行くよ!すごい心配だから』


 潤一は自身の彼女の現状を知るなり、すぐに不安になり、心配なメールを送信した。


愛莉『うん。・・ありがとう。すぐに送るね』


 数秒後、潤一の元に愛莉の家についての情報が位置情報として提供された。


 潤一はその情報をしばらく直視するなり、彼女の家の位置を把握して歩き出した。





 潤一は目的地に到着した。


 つまり、愛莉が位置情報で提供してくれた彼女の家が建てられた場所に辿り着いたのだ。


 潤一の目の前には真っ白で映えるマンションがあった。おそらく、9階以上は設けられたものだろう。


潤一『部屋番号は何?』


 潤一は大理石の床が拡がるマンションのフロントに入るなり、愛莉の自宅のドアフォンを押すために、LiMEで彼女に尋ねた。


愛莉『 404だよ。』


 すぐに潤一のスマートフォンの画面上にLiMEの通知バーが発生した。


 潤一がフロントに用意された404の部屋番号を押すなり、即座に彼の目の前の自動ドアが開放された。


 愛莉が潤一を受け入れ、自宅に訪問させることを承認した証拠だ。


 潤一は初めての体験に多少興奮したが、すぐに平静を取り戻し、マンションのさらに奥へと進んだ。


 潤一は愛莉の部屋にお邪魔した。


 部屋の内装はホワイトの高級そうな壁と床であり、3LDKのものだった。


「愛莉、大丈夫?」


 潤一はリビングに設けられたソファに布団に包(くる)まりながら座る愛莉に心配そうな声で問い掛けた。


「・・・ちょっときついかも。朝から気分が良くないし」


 愛莉は顔色があまり良くなく、血色感も普段より低下していた。


「・・・そうか。それは大変だね。今日は何か食べ物を口に入れた?」


 潤一は愛莉の今日の生活を想像し、まさかと思い、質問をした。


「ううん。入れてない。今日は、体調が優れなくて作れる状態じゃなかった。それに、1人暮らしだから作ってくれる人もいないし」


 愛莉はなぜか潤一と目を合わせず、俯いて床を一点のみ眺めていた。


「それは大変だよ。冷蔵庫に何か食材はないの?」


「多分・・ない。昨日、全部使い切っちゃったから」


 愛莉はようやく潤一に視線を移動させた。


 彼女の眼は疲れているように窺えた。


 潤一はリビングを離れ、キッチンの近所に居場所を持つ冷蔵庫を開けた。


 確かに、彼女の言う通り、冷蔵庫や冷凍庫には食材となるものは存在しなかった。


「愛莉、ちょっと待ってて。すぐに食材買ってくるから」


 潤一はそう口に出すなり、愛莉の返事を待たず、玄関に直行し、靴に履き替えて彼女の自宅を後にした。

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