第46話 再会
「はっ!?」
潤一は意識を覚醒した後、勢い良く起き上がった。
彼はなぜかベッドに寝転がっており、敷布団の柔らかい感触が臀部をやんわりと刺激していた。
「ここは、・・異世界での俺の家だ」
潤一は視界に捉えられた、濃いブラウンの壁や床に、木製のテーブルや白の腰掛けのあるイスが備えられた洋風の空間を確認した後、そのようにぼそっとつぶやいた。
「ってことは」
潤一はベッドから離れ、靴を履くなり、駆け足で外に飛び出した。
すると、彼を驚嘆させる景色が太陽の光と共に飛び込んできた。
そこにはヨーロッパの国でよく見られる横に長い建物が幾つもあった。
その上、潤一が生まれた世界とは異なり、自然感が漂う空気が流れていた。
「どうしてっ・・」
潤一の耳に聞き慣れた女性の声が届いた。
「アリス。帰れたんだな」
潤一は声のした方向に視線を向けた後、口先だけを無意識に動かした。
アリスは驚愕した結果、地面に手に持っていた学生カバンを落としていた。
「潤一君が何で私達の世界に今いるんですか?」
アリスは目の前に現れた現象が信じられないのか。右頬を伸ばして引っ張っていた。
しかし、現実だと知覚した後、ぱあっと顔が明るくなった。
「潤一君!久しぶりだね!!」
アリスは夢中で走り出し、潤一の両手を取った。
彼女はぴょんぴょん足を跳ね上げながら、潤一の腕を上下にぶんぶんさせた。
「ああ。本当に、本当に久しぶりだ」
潤一も嬉しそうに表情をやんわりと綻ばせた。
「それで、どうしてこっちの世界に来ちゃったんですか?」
アリスは潤一と並んで歩きながら、疑問を投げ掛けた。
潤一は異世界の学校の制服に着替えていた。
もちろん、アリスも制服を身に纏っていた。
制服は上下ブラックだった。
男性用は上がブラックのブレザーに黒のズボン。
女性用は上がブラックのブレザーに黒のスカートだった。
「ううっ。やっぱりそこ気になるよな」
潤一は顔をしかめた。
本人としては書かれたくない事柄だった。
しかし、黙っていても仕方がないので、事の経緯を順に説明した。
「うんうん。那須さんと川崎さんが潤一君に告白したんですか。しかも、同じに日にそれは潤一君にとっては災難だったですねー」
アリスは愉快そうにうんうんっと頭を2度ほど首肯した。
「いやいや、何でそんなに楽しそうなんだよ」
潤一は口を尖らせ、表情を歪めながら不満を述べた。
「ふふっ。ごめんなさい。やっぱり那須さんも川崎さんも潤一君が好きだったんだなーと改めて思いましてね」
アリスは上品に口元に手を当て、心底楽しそうに笑顔をこぼした。
「えっ!?アリスは那須さんと瑠奈ちゃんが俺のこと好きだったの知ってたの?」
潤一は目を剥き、アリスに顔を横に向けた。
「ええっ。バレバレでしたよ。逆に潤一君が鈍感すぎるんですよ」
「本当かよ!じゃあ、いち早く俺に教えてくれてもよかったじゃないかよ!」
「それはダメですよ。那須さんと川崎さんのためには黙っておくのが1番適した行動だったんです!」
アリスは「潤一君は男心が無さすぎです」と普段の落ち着いた口調で潤一をたしなめた。
「そんなもんなのか?」
潤一は脳内にクエッチョンマークを浮かべながら、アリスと共に学校に足を運んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます