第40話 真実
「危ない!?避けてアリス!!」
潤一は目の前の光景を認識し、自然と大きな声で叫んでいた。
「おらー!」
担任はアリスの顔を全力で踏みつけようと試みた。
しかし、ギリギリのとこでアリスは身体を動かし避けた。
「大丈夫!アリス!!」
潤一はすぐに担任から距離を取ったアリスに駆け寄った。
「ええ。・・・なんとか」
アリスは横目を使って潤一を視界は捉え、即座に苦痛に耐える痛みを露わにしながらも、担任に目線を移した。
おそらく、追撃が飛んでくるのを警戒しての行動だろう。
「てめぇ。なんてことしやがる」
潤一はアリスの痛々しく腫れた赤い頰を視認した直後、多大なる怒りを覚えた。
その結果、潤一は冷たく低いトーンを用いつつ、非常に鋭い目つきで担任を睨みつけた。
「おー。恐い恐い。だが、お前らが悪いんだからな。中森を異世界に送った犯人を見つけたお前達がな」
担任はとんっとステップを踏みながら、潤一達を蔑むような目を作った。
「その言い草だと、潤一君を私達の異世界に送ったのは自分だと認めるんですね?」
アリスは顔を歪めながら痛々しい右頬に手を添えていた。
「ああっ。バレたからには仕方ないからな。素直に認めるよ。だが、その真実を知ったからにはお前達をこの世界に生かしておくわけにはいかない。殺すなり、未知の異世界にワープさせる必要がある」
担任は近くにあったイスを後方に投げた。数秒後、ガシャンという音が室内に響き渡った。
イスを投げた理由は、シンプルに邪魔だったのだろう。
「それにしても、バレるとはな。それに、まさか中森が俺も1度行ったことある世界に送られていたとはな。正直驚いた」
担任は中森だけに目線をフォーカスさせた。
「1度だけ行ったことある?どういう意味だ?」
潤一は担任の言葉の意味が理解できず、眉をひそめ、タメ口を使って疑問を解消しに掛かった。
「ああっ。理解できないか?簡単な話だ。俺もお前と同じ世界に高校時代に行ったんだ。ただ俺は理由もわからず異世界にワープした。だから、お前と違って誰かに送られたわけではない」
担任は潤一にも理解できるよう、わかりやすく説明してあげた。
「なるほど。これですべてが繋がりました」
アリスがいきなり2者間の会話に割って入った。
「最初、私は潤一君を異世界に送るように依頼した人間がこの世界にいると思ってました。この世界に魔法を使って偶然来た私達の世界の人間にお願いした形を取って。実際に私達の世界でもリスクを犯して、異世界に移動する魔法を使う人間は少数ですが存在するです。しかし、先生が犯人だと気づいて私の仮説は正しいのかといった疑問を持つようになりました。しかし、先生の言葉ですべてが理解できました。私達の世界に生活をした経験がある人間が魔法を使って潤一君をワープさせた。ただそれだけだった。そうであれば、武道もマスターしているはずです。不意打ちにしても、私が避けられなかったのも納得です」
アリスは頬を撫でながらしゃがんだ状態から立ち上がり、長々と言葉を紡いだ。
「ほぉ。すごいな。そうだ。お前の言う通りだ。俺は中森と同じで、お前達の世界で勉学、スポーツ、武道を嫌と言うほど磨かされた。だから、俺は教師に余裕で慣れたし、現在でも勉学や運動や喧嘩では中学生に負けることは絶対にない」
担任は両腰に手を当て、誇らしげに語った。
「それに、中森を異世界に送ったのは、いずれは帰ってきて、目障りな今田をギャフンとやってくれると信頼していたからだ。今田は本当にウザかったし、問題児だった。だから、奴にいじめられていたお前が異世界で色々経験して来れば、今田を学校から追い出してくれると思ったんだよ。そしたら、結果は大成功よー!その件に関しては感謝してるぞ!!」
担任は大声で高笑いした後、「問題児、除外バンザーイ!!」と叫んだ。
「さーて。この辺で無駄話もおしまいだな」
担任は表情を一瞬で元に戻して、足を前に進めて、ポキポキと指の関節を鳴らした。
担任と潤一達の距離が徐々に縮まっていった。
アリスは担任の動きを観察しながら、戦闘体勢に入り、身構えた。
彼女の体勢は綺麗であり、パッと見の隙は見当たらなかった。
アリスも潤一と担任と同様、過去に自分の世界で勉学、スポーツ、武道に嫌というほど精進していた経験があった。
「・・・アリス。俺にやらせて」
そんな緊迫した空気の最中、潤一はアリスの柔らかい肩に手を置き、彼女よりも前に身を置いた。
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