第38話 夜の学校
「いきなりどうしたんだよアリス。夜に一緒に学校に行こうだなんて」
「はい。すいません。ちょっと用事がありまして」
アリスは前方を直視しながら、短い言葉で返答した。
潤一は横目でアリスをちら見しながら、彼女を追いかけるように歩を進める。
そして、アリスは突如、足を止めた。
そこは電気が点いた職員室の前だった。
「どうして止まったんだ?」
潤一も呼応して足を停止させ、率直な疑問を口にした。
「用事があるんです」
アリスはなぜか潤一に視線を向けず、真剣な表情で職員室の入り口の戸を眺めていた。
「そ、そうか」
潤一は普段とは異なるアリスの様子に戸惑い、内心不安を抱いた。
「行きますよ?」
アリスはなぜか潤一に確認をとった後、3回ノックをして戸を開けた。
「失礼します」
アリスは丁重に頭を下げ、職員室のルームに足を踏み入れた。潤一も彼女に倣って、同様の行動を実践した。
「おおっ!?どうしたんだ。こんな時間に」
職員室に1人だけ残っていた潤一とアリスのクラスの担任が驚いた顔で彼らに身体を向けた。彼は自身の席に着席していた。
「すいません先生。この時間ですが、先生に少し用事あるんです」
アリスは以前と変わらず、いつもの余裕な顔はおくびにも表に出さなかった。
「おう!いいぞ!」
担任はイスから立ち上がり、入口の方に足を運んだ。
彼の机には何冊ものノートが重ねて置かれていた。おそらく、生徒からの提出物だろう。
担任はアリスの2メートル前まで来た。
「では、先生に用事についてお伝えします」
アリスは数秒ほど俯いた後、大きな瞳を駆使して担任を見据えた。
「おう。遠慮するなよ」
担任はアリスの次の言葉を促した。
「では、お言葉に甘えて」
アリスは息を整えるため、緊張感を醸し出す間を作った。
潤一はその間に不思議とプレッシャーと恐怖を覚えた。
「潤一君を私達の世界である異世界に送ったのは先生ですよね?」
アリスの声が3人しか存在しない室内全体に行き渡った。
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