第34話 対面


「くそー。なんでまた俺なんだよ」


 ある放課後。潤一は担任に頼まれ、クラスの生徒達から提出されたノートを職員室に運んでいた。


 周囲には雑談する学生がちらほらあった。


「よっと。まあまあ重かったな。いくら筋肉がプラスされたとはいえ、重いものは重いな」


 潤一は30人分のノートを職員室前のテーブルに置いた。


 テーブルには他クラスのノートや問題集もそれぞれ積まれてあった。


「教室に戻るか・・・」


 潤一は独りごちるなり、自身の教室に足を運んだ。


 潤一が教室の目の前に到着するなり、ある人間の声が彼の鼓膜を刺激した。


「川崎さん。あなたが辞退した方がいいわ。だって勝敗はわかりきってるんだもの。無駄な勝負をする必要はないんじゃないかしら?」


 生徒会長に立候補した1人である松本が絶句する瑠奈に対して忠告した。


「いやだよ。だって、勝負はやってみないとわからないでしょ!」


 瑠奈は真剣な表情で松本を見据えた。


 瑠奈は怒りを抑えているのか、両腕がわずかにプルプルと震えていた。


「ぷっ。なによそれ。笑わせないでくれるかしら。勝負はやってみなくちゃわからないって、小学生が口にすることよ」


 松本は噴き出し、心底蔑んだ瞳で瑠奈を卑下した。


「宣言してあげるわ!あなたが勝つようなことは万が一もないから。本当に。だって私の実力と女子に大人気の元生徒会長が推薦してくれるんだから」


 松本は腰に手を当て、偉そうな態度で胸を張った。


「おぅー。おぅー。元生徒会長さんは高飛車だなーー」


 潤一は前の戸から教室に入室した。この教室は潤一のクラスの隣に設置されたものだった。


「あなたは!」


 松本は目を見開き、後方を振り返った。


「潤君!」


 瑠奈は目を輝かせながら、ヒーローを眺めるような瞳で潤一の存在を捉えた。

 

「俺は瑠奈ちゃんの友人の中森っていう者だ。今後、宜しく」


 潤一は瑠奈を一瞥した。よく見ると、彼女の目にはわずかにだが涙があった。


「おい!俺からも元副会長に宣言してやるよ!お前らが瑠奈ちゃんに絶対に勝てないってな!」


 潤一は怒りから声を荒げた。


 松本も瑠奈も両者同時に肩をびくっとさせた。


「はっ。寝言は寝てから言ってくれないかしら」


 松本は下を向きながら、不貞腐れた顔を作るなり、足速と教室を退出してしまった。

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