第32話 瑠奈の目標?


「潤君。私、今度の選挙で生徒会長に立候補しようと考えてるんだよね」


 瑠奈は潤一の席に軽く臀部を接しながら、そうつぶやいた。


「え!本当に」


 潤一は瑠奈の予想外の告白により、目を剥きながら彼女に視線を移動させた。


「ははっ。潤君、驚きすぎだよ」


 瑠奈は姿勢をそのままで振り向き、軽い苦笑いを浮かべた。


 現在、瑠奈の足は空中に浮いていて、両足をバタバタとバタ足させていた。


「なぜ、生徒会長に立候補するんですか?」


 すぐ近所にいたアリスが気になったであろう疑問を投げ掛けた。


「うん。それはね、私のお母さんがこの岡西中学校のOGでさ、しかも生徒会長だったの。だから、当時お母さんが経験した生徒会長を人生で1度は経験したくてね」


 瑠奈は顔を俯きながらも、頬を緩ませた。


「なるほど。それは立派な理由ですね」


 アリスは微笑みながらパンッと両手を合わせた。


「それでね、潤君にお願いがあるの」


 瑠奈は立ち上がり、席に座る潤一に対して身体を向けた。


「うん!俺ができることなら、なんでも受け入れるよ」


 潤一は机に手を添えながら、首肯した。


「じゃあ、遠慮なく行くね。あのね、私が生徒会長になれるように潤君に色々とサポートしてもらいたいの。結構大変になると思うけど大丈夫かな?」


 瑠奈は潤一の顔を窺いながら、おねだりするみたいな表情を作った。この表情が意図的かどうかはわからなかった。


「・・・。いいよ!俺はできる限りの力で瑠奈ちゃんをフォローするよ!」


 潤一は席から勢い良く立ち上がった。


「アリスももちろん手伝ってくれるよな?」


 潤一はアリスの返答に期待を抱いた。


「もちろん!私も川崎さんの目標達成のために全力でフォローさせていただきます!」


 アリスは膨らみの存在しない胸の前でグッと両手をガッツポーズする仕草を披露した。


「ありがとう・・・。ありがとう2人共」


 瑠奈はうるっと瞳を潤ませた。


「それでいつから活動するの?確か、選挙は2週間後だったはずだけど」


 潤一は学生カバンから1年間の学年暦を取り出し、即座に目を通した。


「うん。結構時間が迫ってるだよね。だから、明日の放課後から取り組もうかなって考えてるんだ。2人は大丈夫?」


「うん。大丈夫!」


「はい!大丈夫です!」


 潤一とアリスは2つ返事だった。


「それじゃあ決まりだな!明日の放課後からね」


 潤一は暦を仕舞うなり、学生カバンを手に取った。


「あら、どうしたんですか?いきなりカバンなんて持って」


 アリスは薄ら笑みですべてを見通した目を示した。


「ああっ。ちょっとこれから用事ができてな。だから俺はここらでお暇させてもらう」


 潤一は手を左右に振りながら別れを告げると、駆け足で教室の出口にゴーした。

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