第28話 コンビニ
「うわぁー。色々なものがこの店に置かれてますね〜」
アリスはコンビニの店内に陳列された商品を目を輝かせながら眺めていた。
潤一とアリスは学校に登校する際、通学路の途中に存在するコンビニに立ち寄った。
理由は、潤一の消しゴムが筆箱から無くなっていて、新しい消しゴムを買う必要があったからだ。
「これって、ここで食べてもいいんですかね?」
アリスは商品を手に取り、潤一に見せびらかしながらそう聞いた。
「な、何言ってんだよ。ダメだよ!お金払って買わないと食べられないよ!」
潤一はアリスからぱっとその商品を奪い取るなり、素早く陳列棚に返した。
「そうですか。それがこの世界の常識なんですね!私達の世界では考えられないことです。だって、どこの店でも1度は試食をするのが一般的でしたからね」
アリスは顎に手を当て、興味深そうな顔を作った。
「そうか。確かに向こうの世界ではどの店でも試食をするのが常識だったな」
潤一は異世界での生活を回顧し、直売店で何度も試食をした情景を思い出した。
「とにかく、この世界と向こうの世界での常識は違うからな。何かわからないことがあればすぐに俺に聞いてくれ。そうしないと取り返しのつかない事件も起こりかねないからな」
潤一はそう捲し立てるなり、先ほどアリスが手に取ったお菓子の袋を手に取った。
「あっ・・・。それは」
「食べたいんだろ。消しゴムと一緒に買うから」
潤一はアリスに背を向けて、コンビニのカウンターにそそくさと足を運んだ。
「ほい。これ」
潤一はコンビニ袋からチョコのお菓子の袋を取り出してアリスに差し出した。
「ありがとうございます!嬉しいです!」
アリスはお礼を述べるなり、満面の笑顔で潤一からチョコのお菓子を受け取った。
「う〜ん。このチョコレートすごい美味です〜〜」
アリスは即座に袋を開封し、スナック系のチョコを口に頬張った。その結果、現在、右の頰に手を添えてご満悦のご様子だった。
「開けるな早いな。まぁ、いいけど。個人の自由だし」
潤一は嬉しそうにチョコを頬張るアリスに視線を向けて、苦笑を少しだけ浮かべた。
それから2人は学校を目的地にして2人並んで歩を進めた。
「この世界は私たちの世界とは全然違いますね。なんていうか、こちらの世界の方が色々と文明が発展しているように感じます」
アリスは周囲の建物や住宅を見渡しながら、率直な感想を述べた。
不思議なことに、そのときのアリスの瞳は羨望が帯びたものだった。
「そうだろうな。向かうの世界とは全然景色が違う。俺も帰還して外出したとき、アリスと同じ感情を経験したよ」
潤一はアリスの言葉で改めて現実世界と異世界の違いを明瞭に認識させられた。
そして、潤一はこれから先の未来でよりその違いを理解させられることになるのだろうか。
それは現在では定かではなかった。
「あっ。学校が見えてきましたよ!」
一方、潤一が異世界での光景を想起する最中、アリスは岡西中学の校舎を指差した。
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