第14話 両腕に美女?


「あっ。中森君。奇遇ね」


「本当だね。那須さん」 


 昇降口で靴を履き終え、帰路に着こうとしたとき、偶然にも愛莉と遭遇した。


「私、今日部活がないの。だから、その、一緒に帰らない?」


 愛莉はたどたどしく潤一を誘った。


 緊張に襲われているのか、両手の指は全部クラスされていた。


「それは構わないけど。帰路の道は一緒なの?」


 潤一は率直な疑問を反射的に発した。


「それは大丈夫!だって・・・」


「あ!潤君だ!!一緒に帰ろう!!!」


 潤一を発見した瑠奈がいきなり彼の左腕に飛びついた。彼の身体が軽い体当たりによって右に傾いた。


「瑠奈ちゃん!勢いがすごいよ」


 潤一は自身の腕に抱きつく瑠奈に視線を向けながら、軽く彼女の行動をたしなめた。


「だってー!潤君見つけたら嬉しくなっちゃったんだもん。それに今日は図書委員の仕事も無いから潤君と一緒に帰れるし♪」


 瑠奈はご機嫌な様子で潤一の腕の感触を堪能していた。


 ガシっ。


「えっ。」


 潤一が感触の発生した右腕に目線を変えた。


 なんと、瑠奈と同様に潤一の腕にしがみついた愛莉があった。


「ちょっと!あなた何者?中森君と親しげにして!?」


 愛莉は敵対心を向ける目で瑠奈を見つめた。


「んっ?私は潤君と同じ幼稚園に通ってた川崎瑠奈だよ。あなたは?」


「私は那須愛莉。この学校の陸上部に所属している」


「潤君を独占できないのは気分があまり良くないかな。だから、潤君から離れてくれないかな?那須さん」


 瑠奈は目が一切笑ってない笑顔で潤一から離れるよう催促した。


「それは無理な要望ね。だって私も中森君を独占したいもの」


 愛莉は腕により一層力を込めた。その結果、彼女の豊満な胸が潤一に押さえつけられた。


 潤一のあそこは敏感に反応して、股間が激しくライジングした。


「2人とも。俺、今日体力測定で汗かいてるから多分臭うと思うよ?」


 潤一はこの状況を穏便に治めるために、適当な理由を提示して2人から離れてもらおうと試みた。


「「すんすんっ。すんすんっ」」


 愛莉と瑠奈は同時に潤一の胸の辺りを鼻を使って嗅いだ。


「臭くない!」「最高に良い匂い!!」


 愛莉と瑠奈は上目遣いで臭くないことを訴えた。


「お、おう・・」


 潤一は歯切れの悪い返答をするので精一杯だった。


「おいおい。あいつビックツーの2人に腕組まれてるぞ」


「まじかよ!あいつ、那須さんだけじゃなくて川崎さんも」


「俺達のアイドルのビックツーの2人がー。やっぱり女は高スペックの男に寄っていくのか」


 周辺にいた男子達はマイナスのオーラを醸し出しながら、がっくりと肩を落としていた。





「そろそろ離れたらどう?」


「それはこっちのセリフだよ。那須さん」


 愛莉と瑠奈は帰路に着きながらも、ずっとお互いを牽制していた。潤一の腕に2人ともしがみつきながら。


 その言い争いの間に、桃色のフローラルな香りと柑橘系の香りが潤一の鼻腔を遠慮なしに刺激した。


 これらの香りは愛莉と瑠奈の身体から漂うものだった。


「あのー。俺の自宅の前に到着したんだけど」


 潤一は自宅である真っ白の一軒家を指差した。


 愛莉と瑠奈は言い争いを切り上げ、数秒間自宅を凝視していた。


「今日はこの辺にしといてあげるよ」


「そうね。あなたのためにもね」


 愛莉は胸の前で腕を組んだ。


 瑠奈は潤一に対して手を振り、挨拶を済ませるとその場を去った。


 瑠奈の行動に則り、愛莉も潤一と挨拶を交わしてストップしていた足を進めた。

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