第273話 作戦開始
隠れていた洞窟を出立した俺たちは、海底都市へと向かって泳いでいく。
敵地へと向かうのは、俺と風音、弓月、グリフォン、人魚族の戦士ゲラルクさんだ。
フェルミナは洞窟でお留守番である。
覚醒者の力を持たない彼女には、傷付いた人魚族の女性を診てもらっている。
なるべく岩礁などに隠れながら泳いでいった俺たちは、やがて海底都市の外郭部へとたどり着いた。
外壁はないので、ひとまず住居の陰に身を寄せる。
巨大貝や珊瑚を利用した住居が数百という規模で並んだ、美しい集落だ。
その中ほどには、何十メートルもの高さがある巨大な巻貝状の塔のようなものがそびえ立っている。
あの巨大巻貝の塔が、王宮なのだという。
人魚族の戦士たちがまだ殺されていなければ、あの王宮の地下牢に囚われている可能性が高いとのこと。
おそらくはレベッカさんも。
だが同時に、王宮は敵の本拠地となっている可能性も高い。
地下牢にたどり着く前に、サハギン王と遭遇して戦いになる展開も十分に考えられる。
サハギン王と戦いになって、勝てるのか。
分からない、というのが実際のところだ。
サハギン王の実力は、ゲラルクさんの話を聞いた印象では、俺たち一人ひとりよりはいくぶんか上のようだ。
つまり俺が一対一でサハギン王と戦うことになれば、勝てない可能性が高い。
でも俺と風音、弓月で連携して三対一でサハギン王と戦うことができれば、分は悪くないのではないかと踏んでいる。
どれだけ有利な条件で戦えるかが、勝敗を分ける鍵となるはずだ。
なお海底都市の外郭部にたどり着いた時点で、いつものミッション達成の通知がきていた。
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ミッション『海底都市に到達する』を達成した!
パーティ全員が50000ポイントの経験値を獲得!
新規ミッション『砂漠の都に到達する』(獲得経験値70000)が発生!
弓月火垂が45レベルにレベルアップ!
現在の経験値
六槍大地……866254/914112(次のレベルまで:47858)
小太刀風音……884146/914112(次のレベルまで:29966)
弓月火垂……960071/1024289(次のレベルまで:64218)
───────────────────────
現在のレベルは俺と風音が44レベル、弓月が45レベルとなった。
全員のステータスはこんな感じだ。
六槍大地
レベル:44(+3)
経験値:866254/914112
HP :336/336(+16)
MP :202/296(+16)
筋力 :37(+2)
耐久力:42(+2)
敏捷力:32(+2)
魔力 :37(+2)
●スキル
【アースヒール】
【マッピング】
【HPアップ(耐久力×8)】
【MPアップ(魔力×8)】
【槍攻撃力アップ(+32)】(Rank up!×3)
【ロックバレット】
【プロテクション】
【ガイアヒール】
【宝箱ドロップ率2倍】
【三連衝】
【アイテム修繕】
【命中強化】
【グランドヒール】
【隠密】
【ロックバズーカ】
【回避強化】
【アイテムボックス】
【テイム】
【ストーンシャワー】
【重装備ペナルティ無効】
【エリアアースヒール】
【トンネル】
残りスキルポイント:0
小太刀風音
レベル:44(+3)
経験値:884146/914112
HP :256/256(+16)
MP :207/224(+44)
筋力 :32(+2)
耐久力:32(+2)
敏捷力:53(+3)
魔力 :32(+2)
スキル
【短剣攻撃力アップ(+36)】(Rank up!×2)
【マッピング】
【二刀流】
【気配察知】
【トラップ探知】
【トラップ解除】
【ウィンドスラッシュ】
【アイテムボックス】
【HPアップ(耐久力×8)】
【宝箱ドロップ率2倍】
【クイックネス】
【ウィンドストーム】
【MPアップ(魔力×7)】(Rank up!)
【二刀流強化】
【回避強化】
【隠密】
【トラップ探知Ⅱ】
【二刀流強化Ⅱ】
【ゲイルスラッシュ】
【レビテーション】
残りスキルポイント:0
弓月火垂
レベル:45(+2)
経験値:960071/1024289
HP :256/256(+8)
MP :521/576(+16)
筋力 :27(+1)
耐久力:32(+1)
敏捷力:38(+2)
魔力 :72(+2)
●スキル
【ファイアボルト】
【MPアップ(魔力×8)】
【HPアップ(耐久力×8)】
【魔力アップ(+18)】
【バーンブレイズ】
【モンスター鑑定】
【ファイアウェポン】
【宝箱ドロップ率2倍】
【アイテムボックス】
【フレイムランス】
【アイテム鑑定】
【エクスプロージョン】
【弓攻撃力アップ(+14)】(Rank up!×2)
【トライファイア】
残りスキルポイント:0
数値上昇等の比較対象は、聖王国王都に向かう前。
各自、ステータスと攻撃力アップ系スキルが地道に強化されているだけだが、その分だけ着実に強くはなっている。
俺たち四人と一体は、集落外郭部にある一軒の住居の陰に隠れたまま、集落内部の様子をうかがう。
集落のあちこちに、何人もの人魚たちが泳いでいる姿が見えた。
彼ら彼女らは、どこかビクビクとした様子で、周囲を気にかけているように見える。
「集落の民たちは、拘束されたりはしていないようだな」
ゲラルクさんが集落の様子をうかがいながら、小声で口にする。
「でも何だかみんな怯えている感じ。サハギンを恐れてるのかな」
「そりゃそーっすよ。覚醒者の力を持ってない一般人じゃ、やつらに横暴されても何もできねぇっす。でも隙を見てこの集落から逃げたりはできないんすかね?」
「それもサハギンに見つかったら、間違いなく逃げ切れないだろうな」
そしてそうなったら最後、一度逃げ出そうとした者の行く末は想像に難くない。
ただでさえ残虐行為を平然と行う連中なのだ。
と、そんなことを考えていたときだ。
集落の中心部、王宮がある方角から、こんな声が聞こえてきた。
「ギャーギャギャギャッ! 人魚族の諸君、元気かなぁ? 誰一人逃げちゃいないだろうなぁ? 一人逃げたら三人殺す。分かってるよなぁ?」
「言っとくがよぉ、我らの王がお出掛けになられたからといって、妙な気は起こすんじゃねぇぞ? 反逆者が一人出れば五人殺す。そもそも戦士でもないお前らごときじゃ、束になったところで俺たちには敵いやしねぇんだがな。ギャギャギャッ」
脅しの言葉をばら撒きながら、こちらに向かって悠然と泳いでくるサハギンが二体。
それに気付いた集落の人魚たちが、びくりと震えて、慌ててサハギンどもの進路から遠ざかろうとする。
泳ぎ来るサハギンたちが、ニタァっと笑ったように見えた。
うち一体が声をあげる。
「おい、そこのマーメイド。止まれ」
そう呼びかけられて、彼らから遠ざかろうとしていた人魚族の女性が一人、金縛りにあったように動きを止めた。
距離をとろうとしていたほかの人魚たちの何人かが、その様子を見て動きを止め、緊張した様子で状況を見守りはじめる。
「な……なんでしょうか」
サハギンに背を向けた姿で金縛りにあっていた人魚女性は、心底怯えた様子で半魚人たちの方へと振り返る。
二体のサハギンのうち一体が、彼女のもとに泳ぎ寄る。
もう一体はほかの人魚たちを挑発するように、ニタニタしながら周囲を見回した。
泳ぎ寄ったサハギンは、人魚女性の腕を乱暴につかむ。
「ギャギャギャッ、次の苗床はお前に決めたぞ。俺たちの卵を産ませてやろう。光栄に思うがいい」
「あっ……や、いや……やめてください……私には、夫が……」
「ギャギャギャッ、それがどうした。何ならお前の旦那も連れてきて、その目の前で襲ってやろうか? ほぉれ、こんな風に」
サハギンに力ずくで攻められ、振りほどくこともできずに、そのまま海底の砂地に背中を押し付けられる人魚女性。
彼女は恐怖と嫌悪に引きつった顔で、イヤイヤするように首を横に振る。
長い舌を出したサハギンが、その顔を近付けていって──
「いい加減にしろ! 【三連衝】!」
「グギャアアアアアッ!」
【隠密】状態で接近した俺は、人魚女性に横暴を行うサハギンを一息のもとに片付けた。
「ったく、どいつもこいつも──はあっ!」
「こいつはオマケっす──【ファイアボルト】!」
「なっ……!? ギャアアアアアアッ!」
同じく【隠密】状態で近付いた風音の攻撃と、物陰からの弓月の追加攻撃とで、もう一体のサハギンも撃破する。
なお火属性魔法でも、水中で普通に効果を発揮することはあらかじめ確認済みだ。
急変した状況を見て、あっけにとられた様子の集落の人魚たち。
その前にゲラルクさんが姿を現すと、彼ら彼女らは感極まったような表情を見せた。
ゲラルクさんはそれに対し、口元に人差し指を立てて静かにするように促す。
喝采の声を上げようとしていた集落の人魚たちは、慌てて口をつぐんだ。
ゲラルクさんは集落の人魚たちに向け、俺たちを指し示す。
そして静かに、しかし力強く、こう口にした。
「我々は海神の導きとも思える、頼もしい戦士たちの助力を得ることができた。これからサハギンどもに反撃を仕掛ける。みんな、知っているだけの情報を教えてくれ」
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