第156話 グリフォン山
「「「
ムキムキ男たちの声が、グリフォン山の
彼らに
山道を進むのは、エスリンさんと三人のムキムキ従者(?)たち、それに俺と風音さん、弓月の合計七人だ。
グリフォン山は、かつてドワーフ集落へと向かったときに通った山道の、すぐ近くにある。
山の麓までは街から徒歩一時間ほどでたどり着くが、そこからが本番だ。
さんさんと降り注ぐ太陽の下、俺たちは赤茶けた山道を踏みしめ、着々と歩みを進めていく。
その折、風音さんがエスリンさんに話しかける。
「あの男の人たちって、エスリンさんのところの従業員なんですか?」
風音さんの視線が指し示すのは、台車を引いている三人のムキムキ男たちだ。
「まあそんなとこやね。正式に雇ったわけでもないんやけど、何でかうちのこと慕ってついてきてくれてる。日当はちゃんと払っとるよ」
「俺たちは、姐さんファンクラブのメンバーであります!」
「姐さんのためなら何でもします!」
「姐さん、ゴルドーのクソ野郎をぶん殴ってよければ、いつでも言ってください! 飯も食えなくなるぐらいボコボコにしてやります!」
「あははっ。いや、暴力沙汰はいかんよ」
そう言って、困り笑いを浮かべるエスリンさん。
あれはあれで大変そうだな。
「そういえば『ゴルドー』っすか? さっきのあのデブオヤジ、何だったんすか?」
弓月がそう聞くと、エスリンさんは眉根を寄せつつ答える。
「ゴルドーさんは、このあたり一帯で幅を利かせる豪商の一人やね。うちみたいな青二才の女商人が力をつけるのが気に食わんのか、逆に気に入られてんのか分からんけど、とにかく妙にちょっかいかけてくるんよ。いい迷惑やわ」
「『さっさとワシのもとに来い!』とか言ってたっすね」
「あはははっ、似とる似とる。──そらまあ、ひょっとしたらいい話なのかも分からんし、贅沢したくないって言ったら嘘になるけどな。うちは誰かに飼われたくはない。一人の商人として、自分の力で成功したいんよ。遠回りでも、無理でもな」
「まあ、あれに飼われたくないのは分かるっす。うちは先輩に飼われるならいいっすけどね。わんわんっ」
そう言って弓月がすり寄ってくるので、俺は苦笑しながらその頭をなでる。
「わんわん言うけど、お前は忠犬って感じじゃないよな」
「うち、先輩の愛犬にはなれないっすか? こんなに慕ってるっすよ? くぅーん」
「つぶらな瞳で見つめてくるのはやめてくれ。負けそうになる」
「なんやそこ、そういう関係か?」
エスリンさんがニヤニヤしながら聞いてくる。
すると弓月が、俺の腰にギュッと抱き着いてきた。
「そっすよ。うちと先輩はそういう関係っす」
「あと私と大地くんも、そういう関係でーす」
さらに風音さんが、背後から抱き着いてきた。
三体合体。がしゃーん。
……いや、クライアントにバカップルぶりを見せつけるのは、いかがなものかと思うが。
「ほ、ほーん……。なるほどな。そんな感じか」
「お恥ずかしながら、そんな感じです。でも仕事はちゃんとやりますので」
「いや、ホンマそこは頼むよ」
エスリンさんから、ちょっと疑うような目を向けられた。
残念ながら当然である。
「飼うっていえば、先輩。【テイム】ってどうやるんすか? やっぱ倒しちゃったらまずいんすよね?」
話のついでに、弓月がそう聞いてくる。
「ああ、倒したらダメだな。ターゲットのHPをできるだけ削ってから、俺が【テイム】のスキルを使う。うまくいけば【テイム】成功だ。ターゲットの残りHPが低いほど、成功率が高くなる」
「ふむふむ、結構めんどくさそうっすね。ちなみに【テイム】って、相手が遠くにいても使えるんすか?」
「ああ。射程は攻撃魔法と同じぐらいだな」
そんな話をしながら、俺たちが山道をしばらく進んでいった頃だった。
風音さんが、ぴくりと反応した。
「この先から、何か近付いてくるよ。数は三つ」
「三体? ってことは、グリフォンじゃないっすよね」
「そのはずだけど──来るよ!」
風音さんの警告の声とともに、行く手の先、崖の陰から三体のモンスターが飛び出してきた。
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