第154話 新規クエスト
一日休息をとって、翌朝。
元の世界への帰還まで、あと92日。
チュンチュンと小鳥の鳴き声が聞こえてくる中、ベッドの上で目を覚ました俺たちは、準備をしてから冒険者ギルドへと向かった。
ギルドに着いたら、掲示板前に殺到している冒険者たちに混ざって、今日も地道にクエスト探しだ。
もちろん、目的はクエストそのものというよりは、それに便乗したミッションの達成である。
現在の未達成ミッションは、以下の通りだ。
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▼ミッション一覧
・人口1万人以上の街に到達する……獲得経験値3000
・ドワーフ大集落ダグマハルに到達する……獲得経験値20000
・世界樹に到達する……獲得経験値30000
・ゾンビを10体討伐する(0/10)……獲得経験値2000
・オーガを3体討伐する(1/3)……獲得経験値5000
・グリフォンを1体討伐する(0/1)……獲得経験値5000
・ミノタウロスを1体討伐する(0/1)……獲得経験値8000
・ヒュドラを1体討伐する(0/1)……獲得経験値20000
・ドラゴンを4体討伐する(1/4)……獲得経験値100000
・エルダードラゴンを1体討伐する(0/1)……獲得経験値100000
・Bランククエストを1回クリアする(0/1)……獲得経験値8000
・モンスターの【テイム】に成功する……獲得経験値10000
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小粒なものから大粒なものまで、あれやこれやあるな。
圧倒的においしいのはドラゴン討伐系だが、さすがにその類のクエストはそうそう見当たらない。
いっそクエストとか関係なくエアリアルドラゴンを周回して狩るのはどうかとも考えたが、一度倒したモンスターが同じ場所に現れるまでの期間はまちまちで、数時間から数日までバラツキがあるらしい。
よって、それも却下。
アリアさんの助けなしに、安定してアレに勝てるかどうかも怪しいしな。
次点でおいしいのが「ヒュドラ」の討伐だが、こちらもそれらしいクエストは見当たらない。
これもクエスト関係なく、出現地帯を調べてみるのも手かもしれないが──
「ま、ひとまずはこのあたりで堅実に攻めようか」
俺は掲示板から、一枚のクエスト依頼書を手に取った。
モンスターの生息地帯は逃げないだろうが、いい具合のクエストは一期一会だ。
俺は風音さんと弓月に、剥がしてきたクエストの貼り紙を見せる。
「今回はこれで行こうと思いますけど、どうでしょう」
そのクエスト用紙には、こんな内容が記されていた。
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クエスト概要……『グリフォン
クエストランク……B(推奨レベル:20レベル~)
依頼者……商人エスリン
クエスト内容……『グリフォン山』の中腹に、かつて稀少鉱物の採掘が行われていた廃坑がある。その廃坑までの往復と、採掘中の護衛をお願いしたい。日帰りを想定している。
その他……グリフォン山の一般的な攻略難易度はCランク。しかし最近はイレギュラーが頻発しているらしいので、ワンランク上のクエストとして依頼した。報酬もその分だけ増額してある。実力ある冒険者パーティにお願いしたい。
報酬……金貨80枚
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クエスト内容を見た弓月が、ふむふむとうなずく。
「『グリフォン山』っすか。『グリフォン』って確か、ミッションにあったモンスターっすよね?」
「ああ。『グリフォンを1体討伐する』、獲得経験値5000だ。それに加えて『Bランククエストを1回クリアする』の経験値8000も入る。ドラゴン討伐のあとだと見劣りするが、あれはさすがにイレギュラーだしな。このあたりで手を打つのが現実的だと思うんだが」
「うん、私はいいと思う。ていうかさすが大地くんって感じ。──で、グリフォン、グリフォンっと……」
風音さんは【アイテムボックス】からモンスター図鑑を取り出し、ページをめくっていく。
「あった、これか。胴体が獅子で、鷲の頭と翼をもつモンスターだって。──ねぇ大地くん、これってひょっとして【テイム】できない?」
「ご明察です、風音さん。グリフォンは【テイム】できるモンスターです。なので『モンスターの【テイム】に成功する』の経験値10000ポイントも視野に入ってきます」
昨日【テイム】できるモンスターとしてリストアップした中には、グリフォンは含まれていなかったが、あれは「今まで遭遇したモンスターの中で」【テイム】できるモンスターだ。
まだ遭遇していないモンスターの中にも、【テイム】可能なものは存在する。
グリフォンはまさに、それに該当する。
だが問題もある。
【テイム】をするには、そのモンスターを倒してしまってはダメなのだ。
したがって『グリフォンを1体討伐する』の5000ポイントと、『モンスターの【テイム】に成功する』の10000ポイントは、どちらか一方だけの獲得になってしまう。
一方で風音さんは、俺に向かって人差し指を立ててみせて、分かってないなぁとばかりにこう言ってきた。
「違うよ大地くん。昨日も言ったけど、大事なのはモフモフだよ。──ほら見て、このイラスト。この子すごくモフモフっぽくない?」
「えっ……。そ、そうなんですか? 俺モフモフとかあまり興味ないので、よく分からないですけど」
「うそぉっ!? 大地くん、モフモフの良さが分からないの!?」
風音さんが、まるで異星人を目撃したような目で俺を見てきた。
それから、その場でがくりと膝をつく。
「そんな……モフモフの良さが分からない人類が、この世に存在するなんて……」
「やれやれ。感受性に乏しい先輩はこれだから困るっす」
「なんかキミたちさ、俺のこと好きだからを免罪符にして、好き放題ディスるよね」
まあこのぐらいのディスりは、じゃれているだけだと思えばかわいいもんだけどな。
さておき、クエストを受けることに決めた俺たちは、受付に行ってクエストを受託した。
その際、受付のお姉さんから、こんな注意を受ける。
「この依頼書にも書かれていますが、ここ何日かでモンスターのイレギュラー発生が多数報告されているので、気を付けてくださいね」
「モンスターのイレギュラー発生というと?」
「本来その場所では遭遇しないはずのモンスターと遭遇するとか、想定外の数のモンスターと遭遇するとかですね。頻発といっても、数例の報告があった程度ではありますけど」
そういえば以前に立ち寄ったエルフ集落でも、想定外の数のモンスターに襲撃されたと言っていたことを思い出す。
いろいろとキナ臭くなってきたが──
まあリスク面がちょっと危うくなってきたからといって、ここで異世界活動を終了して、92日後まで街で引きこもるって選択肢はないよな。
ここまで来たなら、可能な限り限界突破をして突き抜けてやろう。
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