第146話 洞窟(2)

 ヴァンパイアバット三体との戦闘終了後。

 洞窟の登り坂の道を、俺たちは確かな足取りで進んでいく。


「やっぱりダイチさんたち、強いですわ……。ヴァンパイアバットの群れは、熟練の冒険者パーティでも苦戦する相手なのに。こんなにあっさりと……」


 ランプを手に先頭を進むアリアさんが、感嘆の声をもらす。

 俺はそれに、自分が手にした新品の槍を見せつつ答える。


「アリアさんが報酬を前払いしてくれたおかげもあります。それで装備をしっかり強化できましたから」


 俺が装備している槍は、以前のコルセスカ(攻撃力21)から、街の武具店で購入したアルシェピース(攻撃力28)へとランクアップしていた。

 これは通常の店売り品では最上級の槍であり、俺はひとまず最善と言える武器を入手できたことになる。


 そればかりでなく、風音さんの二本目の短剣もクリス(攻撃力13、魔法威力+1)からルーンクリス(攻撃力25、魔法威力+2)に格上げされているし、弓月の帽子もメイジハット(防御力3、魔法威力+1)からウィザードハット(防御力9、魔法威力+2)に強化されているなど、パーティメンバー全員の装備品パワーアップが実現されている。


 それもこれも、アリアさんが前払いしてくれた金貨500枚──500万円相当という高額報酬のおかげだ。


 あとこっちの世界だと、戦闘回数が少ない分だけ装備品の消耗が少ないから、武具の耐久値を気にせずに装備品を新調できるのも大きい。

 俺の【アイテム修繕】だけで、パーティ全員の装備品の耐久値減少を賄いきれるのはありがたい。


 一方でアリアさんは、俺の言葉に対してかぶりを振る。


「だとしても、ですわ。ダイチさんたち一人ひとりが、熟練冒険者二人分に匹敵する戦力といっても過言ではないかも……」


「いや、さすがにそれは過言じゃないですか?」


「ならダイチさん。仮にわたくしが二人いたとして、ダイチさん一人でそれを相手にして、絶対に勝てないと思いますの?」


「それは……」


 やってみないと分からない感じはする。


 アリアさんは優秀だと思うが、それはヒーラーとして見たときの印象が強く、戦闘能力自体はさほどでもない。


「こう見えてもわたくし、25レベルの熟練冒険者の中でも優秀なほうだと自負していますの。でもダイチさんたちといると、その自信がどんどん削られていきますわ。ぐすんっ」


「えっと……す、すみません」


「……それにダイチさんたち、すぐにイチャイチャするし……見せつけられるこっちの身にもなってほしいですわ」


「えぇっと……す、すみません……?」


 アリアさんが何やら拗ねておられる。

 拗ね方がちょっとかわいい。


「で、でもアリアさんなら、その気になれば相手はいくらでも見付かるんじゃないっすか?」


「そ、そうだよ。アリアさんなら、その気になればさ」


 弓月と風音さんが、慌ててフォローを入れようとしたのだが──


「いい人がいないんですのぉ~! ……じゃあホタルさんとカザネさん、ダイチさんを譲ってほしいって言ったら、譲ってくれますの?」


「「それはダメ(っす)」」


「ほらぁ。そういうものですわ」


 二人のにべもない手のひら返しに、ぐすんっと、なおも涙目で拗ねるアリアさんである。

 才色兼備で家柄も良いのに、なぜだか悲哀が似合うんだよな、この人……。


 あと俺に対する評価がまた、妙に高いのは何なのか。

 異世界七不思議の一つである。

 残りの六つは募集中。


 それはさておき。

 俺たちはその後も、順調に洞窟探索を進めていった。


 その途中、ヴァンパイアバットの群れと追加で三度ほど遭遇したが、いずれも順当に撃破。


 MPは徐々に削られていくが、それも現段階で大きく問題視するほどではない。

 おまけに途中で一個、宝箱が出て、「MPポーション」を一本手に入れたりもした。


 なおこの間に弓月は、【弓攻撃力アップ】のスキルを修得して、フェンリルボウによる与ダメージの検証を行っていた。


 四度の戦闘を重ねた後、難しい顔をしながら隣を歩く弓月に、俺は声をかける。


「【弓攻撃力アップ】の効果、どんな感じか分かったか?」


「うーん……確実なことは言えないっすけど、一応目に見えるだけの効果はある感じっすね。【弓攻撃力アップ(+2)】だけじゃはっきりしなかったから、【弓攻撃力アップ(+4)】まで取ってみたっすけど、それでダメージ+10って感じっす」


「スキル二枠ぶんで、ダメージ+10? それはかなり大きくないか?」


「大きいっす。少なくとも、純粋な『外れ』じゃないのは間違いなさそうっすね」


 結局弓月は、先のレベルアップで獲得した1ポイントも注ぎ込んで、【弓攻撃力アップ(+6)】まで修得した。

 これで対エアリアルドラゴン戦の戦力は、さらに強化されたはずだ。


 また俺と風音さんも、先のレベルアップで獲得したスキルポイントを使って、それぞれに戦闘能力を強化した。


 やがて俺たちは、洞窟の出口へとたどり着く。

 ここまで来れば、目的地である飛竜の谷の奥地までは、あと一歩だ。


 薄闇に慣れた目に、まばゆい太陽の光を受けながら、俺たちは洞窟の外へと踏み出していった。



六槍大地

レベル:30(+1)

経験値:142444/158925

HP :186/186

MP :100/162(+6)

筋力 :27(+1)

耐久力:31

敏捷力:24(+1)

魔力 :27(+1)

●スキル

【アースヒール】

【マッピング】

【HPアップ(耐久力×6)】

【MPアップ(魔力×6)】

【槍攻撃力アップ(+24)】

【ロックバレット】

【プロテクション】

【ガイアヒール】

【宝箱ドロップ率2倍】

【三連衝】

【アイテム修繕】

【命中強化】

【グランドヒール】

【隠密】

【ロックバズーカ】(new!)

【回避強化】(new!)

残りスキルポイント:0



小太刀風音

レベル:31(+2)

経験値:163056/181490

HP :168/168(+36)

MP :102/120(+5)

筋力 :24(+1)

耐久力:24(+2)

敏捷力:40(+2)

魔力 :24(+1)

スキル

【短剣攻撃力アップ(+22)】(Rank up!×2)

【マッピング】

【二刀流】

【気配察知】

【トラップ探知】

【トラップ解除】

【ウィンドスラッシュ】

【アイテムボックス】

【HPアップ(耐久力×7)】(Rank up!)

【宝箱ドロップ率2倍】

【クイックネス】

【ウィンドストーム】

【MPアップ(魔力×5)】

【二刀流強化】

【回避強化】

【隠密】

【トラップ探知Ⅱ】

残りスキルポイント:0



弓月火垂

レベル:30(+1)

経験値:140141/158925

HP :138/138(+6)

MP :214/306(+6)

筋力 :19

耐久力:23(+1)

敏捷力:28(+1)

魔力 :51(+1)

●スキル

【ファイアボルト】

【MPアップ(魔力×6)】

【HPアップ(耐久力×6)】

【魔力アップ(+12)】

【バーンブレイズ】

【モンスター鑑定】

【ファイアウェポン】

【宝箱ドロップ率2倍】

【アイテムボックス】

【フレイムランス】

【アイテム鑑定】

【エクスプロージョン】

【弓攻撃力アップ(+6)】(new!)

残りスキルポイント:0



 ***



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