第94話 冒険者登録

 この世界でのお金を稼ぐ手段を得るために、「冒険者ギルド」にやってきた俺たち。


 総合受付と思しき窓口へ向かおうとすると、その隣の窓口からこのような声が聞こえてきた。


「お待たせしました。こちら8個の魔石の買い取りで、合計額は銀貨8枚になります」


 隣の窓口──「魔石買取」と札が出された窓口の受付嬢は、くすんだ銀色の貨幣を8枚、トレーに載せて差し出す。

 冒険者であろう男が貨幣を受け取って、財布らしき小さな巾着袋に入れて立ち去った。


 魔石買取、か。


 この異世界と、俺たちの世界のダンジョン周辺事情とは、どういうわけか共通点が多い。

 ひょっとすると、俺たちが今持っているフレイムスカルやガーゴイルの魔石も、換金できるかもしれない。


 ともあれその前に、総合窓口だ。

 俺たちが窓口に立つと、受付嬢が営業スマイルを浮かべて声をかけてきた。


「いらっしゃいませ。今日はどういったご用件でしょうか?」


「冒険者になりたいんですが、どうしたらいいでしょうか?」


 すると受付嬢は、目をぱちくりとさせた。


「えぇっと……まだわが国のギルドで冒険者登録をされていない、ということでしょうか? 皆様が身に着けていらっしゃる武器や防具は、かなり上級のものとお見受けしますが……」


「はい、そんなところです」


「そうですか、失礼いたしました。それではまず、こちらの用紙に氏名などをご記入ください。読み書きはできますでしょうか? こちらで代筆をすることもできますが」


「自分で書けると思います……多分」


 受付嬢から渡された用紙には、氏名や性別などの記入欄があった。


 用紙に書かれている文字は、看板などの文字と同じようにこの世界の言語だが、俺は普通に読むことができた。


 ペンを受け取って、必要事項を記入していく。

 書けるかどうか緊張したが、俺はこの異世界の文字で必要項目を記入することができた。

 これも【翻訳】スキルの効果だろう。


「では次に、ステータスをお見せください。現在のレベルなどを確認させていただきます」


「ステータスっていうと……【ステータスオープン】──これで大丈夫ですか?」


「はい、ありがとうございます。──わっ、レベル25ですか。ベテランの方だったんですね」


「えっ……あー、まあ、はい」


 ステータスも、この世界で普通に通用するようだ。

 あと25レベルはベテラン扱いなのか。


 受付嬢に質問してみよう。


「あの、つかぬことをお聞きしますが。このせか……一般的な『冒険者』のレベルって、25レベルまでしか上がりませんか?」


「……? はい。『限界突破の試練』に遭遇した冒険者でなければ、通常は25レベルが上限のはずですが」


 受付嬢はわずかに訝しむような素振りを見せる。


 これ以上、変なことを聞くのはやめておいたほうがいいかもしれないと思い、俺はお礼を言って対話を切り上げた。


 その後、風音さんと弓月も同じように手続きをして、三人分の「冒険者登録」が完了した。


 するとまた「ピロンッ」と音がして、メッセージボックスが開いた。


───────────────────────


 ミッション『冒険者ギルドで冒険者登録をする』を達成した!


 パーティの全員が1000ポイントずつの経験値を獲得!


 現在の経験値

 六槍大地……69445/78577(次のレベルまで:9132)

 小太刀風音……69445/78577(次のレベルまで:9132)

 弓月火垂……69445/78577(次のレベルまで:9132)


───────────────────────


 ほほう。

 今回は「新規ミッション」は出なかったか。


 俺たちはその後、受付嬢からこの国の冒険者に関する説明をひと通り受けてから、総合窓口をあとにする。


 そして次には、すぐ隣にある「魔石買取窓口」へと向かった。

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