第95話 魔石換金
俺は魔石買取窓口に行くと、ガーゴイルの魔石とフレイムスカルの魔石をそれぞれ1個ずつ、受付嬢に提示した。
「この二つの魔石なんですが、それぞれいくらになりますか?」
「こちらの二種類ですね。確認いたしますので、少々お待ちください」
受付嬢は虫眼鏡のような道具を使って、魔石をのぞき込む。
俺たちが元いた世界であれば、ガーゴイルの魔石は1個7500円、フレイムスカルの魔石は1個9000円での買い取り価格(額面)だった。
魔石の買い取り価格は、魔石が蓄えている「パワー」によって決まるというのが、俺たちの世界での扱いだった。
コボルドの魔石ならば、パワー4なので400円。
キラーワスプの魔石ならば、パワー20なので2000円といった具合だ。
したがって、ガーゴイルの魔石ならパワー75、フレイムスカルの魔石はパワー90ということになる。
この世界の物価はまだしっかりとは把握していないが、この冒険者ギルドに来るまでに見掛けた出店の値段などから判断するに、銅貨1枚=100円、銀貨1枚=1000円程度とみておけば大きく外れなさそうだ。
そこから期待される、ガーゴイルの魔石とフレイムスカルの魔石の買い取り価格は──
「これは……どちらもかなり高位の魔石のようですね。こちらの魔石は銀貨7枚半、もう一方の魔石は銀貨9枚での買い取りになります。買い取らせていただいてよろしいですか?」
ドンピシャだ。
この金額なら普通に売りでいいだろう。
「じゃあこれを全部、買い取りでお願いします」
俺はあらためて、手持ちの魔石をすべて提示した。
全部でガーゴイルの魔石が12個、フレイムスカルの魔石が9個だ。
それを見た受付嬢が、目を丸くする。
「こ、このレベルの魔石を、こんなにたくさん……!? どちらでこれを……あ、いえ、入手経路を問う必要はありませんね。すべて本物かどうかだけ確認させていただきます」
受付嬢は虫眼鏡を使って、粛々と魔石の確認をしていく。
やがて確認を終えると、トレーに貨幣を載せて渡してきた。
「お待たせしました。合計で金貨17枚と、銀貨1枚での買い取りになります」
黄金色の貨幣が17枚と、銀色の貨幣が1枚。
金貨1枚は1万円と思っておけばよさそうだな。
俺は貨幣を受け取ると、受付嬢にお礼を言って窓口を離れた。
そして風音さん、弓月と寄り集まって、ホッと息をついた。
「とりあえず当座の生活費は手に入ったみたいです」
「大地くん、すごぉい……!」
「ホントっすね。六槍先輩、こういうときは意外と頼りになるっす」
「『意外と』は余計だ」
俺は弓月の頭を、コツンと軽くたたく。
弓月はてへっと舌を出して、いたずらっ子の顔をした。
いやまあ、俺も自分で「意外とやるな俺」って思ってるけど。
一つ一つの物事が、うまくやれるかどうか心臓バックバクですわ。
さて、この17万円分ぐらいのお金があれば、当面は生きていくためのお金に困ることはないと思う。
あとは今後の収入の確保だな。
総合窓口の受付嬢から聞いた話によると、「冒険者」は主に「クエスト」をこなすことによって収入を得るのだという。
魔石の換金ではないのかというと、それも収入源の一部ではあるが、それだけでは普通は暮らしていけないのだそうだ。
このあたりは俺たちの感覚だとよく分からないが、まあ現地の人がそう言うからにはそうなんだろう。
今の魔石換金窓口の人の反応を見るに、高額魔石を多数手に入れるのは稀有なことなのかもしれない。
「クエスト」とは何かというと、冒険者に依頼される仕事のことらしい。
依頼された仕事を達成すれば、指定された報酬が支払われるのだとか。
このあたりも、実際に触ってみたほうが分かりやすいだろう。
俺たちは受付嬢から教えられた「クエスト掲示板」のほうへと向かった。
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