第57話 ひったくり
第六層探索、二日目、そして三日目。
この二日間も、初日同様、俺たちは順調にダンジョン探索を進めた。
マップ開拓もつつがなく進み、三日目の終わり頃には第七層への階段も発見した。
二日間の稼ぎは、諸々トータルして一日およそ18万円ずつ。
初日──二人組の
俺たち三人分の日当を払って、ダンジョン予算として使えるのは一日あたり13万〜14万円ほど。
この収入を使って、まずは小太刀さんに「疾風のブーツ」(10万円)を購入。
また防御力・耐久値ともにガタが来ていた俺の「ブロンズシールド」をお役御免にし、代わりに「アイアンシールド」(5万円)を購入して装備した。
その上で初日の余りと合わせて17万円ほどのダンジョン予算が残っていたので、いざというときの保険のために「帰還の宝珠」(10万円)を購入。
この使い捨てのアイテムは、ダンジョン内で使用すると即席の転移魔法陣を生み出し、パーティ全員をダンジョンの外に瞬間転移させる効果がある。
使い捨てアイテムとしては非常に高価なので、なるべく使わずに済ませたいところではあるが、それでも一個持っていると安心感が違う。
活動の幅も広がるだろう。
残りのお金は、次のランクの武具購入のために貯蓄しておくことにした。
さらにこの二日間の第六層探索で、俺たち三人は各自1レベルずつのレベルアップを果たしていた。
六槍大地
レベル:16(+1)
経験値:10931/13527
HP :80/80(+4)
MP :90/90(+5)
筋力 :17
耐久力:20(+1)
敏捷力:15(+1)
魔力 :18(+1)
●スキル
【アースヒール】
【マッピング】
【HPアップ(耐久力×4)】
【MPアップ(魔力×5)】
【槍攻撃力アップ(+14)】(Rank up!)
【ロックバレット】
【プロテクション】
【ガイアヒール】
【宝箱ドロップ率2倍】
残りスキルポイント:0
小太刀風音
レベル:17(+1)
経験値:13820/17433
HP :60/60
MP :64/64(+19)
筋力 :15
耐久力:15
敏捷力:26(+1)
魔力 :16(+1)
スキル
【短剣攻撃力アップ(+10)】
【マッピング】
【二刀流】
【気配察知】
【トラップ探知】
【トラップ解除】
【ウィンドスラッシュ】
【アイテムボックス】
【HPアップ(耐久力×4)】
【宝箱ドロップ率2倍】
【クイックネス】
【ウィンドストーム】
【MPアップ(魔力×4)】(new!)
残りスキルポイント:0
弓月火垂
レベル:15(+1)
経験値:8442/10402
HP :60/60(+4)
MP :150/150(+5)
筋力 :12
耐久力:15(+1)
敏捷力:17(+1)
魔力 :30(+1)
●スキル
【ファイアボルト】
【MPアップ(魔力×5)】
【HPアップ(耐久力×4)】
【魔力アップ(+6)】
【バーンブレイズ】
【モンスター鑑定】
【ファイアウェポン】
【宝箱ドロップ率2倍】
【アイテムボックス】(new!)
残りスキルポイント:0
そうして三日目の探索を終えた後。
カラスが鳴くから帰る時間を、少し過ぎた頃。
ダンジョン前の土手で自転車にまたがった俺は、同じく自転車を携えた小太刀さん、弓月と別れの挨拶をする。
「じゃ、明日は第七層に下りるってことで。二人とも、また明日」
「うっす、また明日っす。愛してるっすよ、先輩♡」
「はいはい、俺も愛してるよ」
弓月が相変わらず適当なことを言ってくるので、俺も適当な言葉で返す。
でも小太刀さんの前でそういうのは、ちょっとやめてほしい。
勘違いされたらどうするんだ。そのときは責任取れよ。
などと思っていると──
もう一つ、予想外の言葉が飛んできた。
「わ、私も愛してますよ、六槍さん。それじゃ、また明日です」
「え……? あ、え……あ、はい。俺も愛してます、小太刀さん。また明日……」
小太刀さんがぶつけてきた言葉があまりにも予想外で、俺はしどろもどろの言葉を返してしまった。
一方の小太刀さんは、何事もなかったかのように自転車を漕いで、俺の帰路とは反対方向へと走っていった。
いや、ちょっと耳が赤かったような……?
そのあとを、俺と小太刀さんを交互に見た弓月が、慌てて自転車で追いかけていく。
俺もまた、そこで止まっていてもしょうがないので、家に向かって自転車を漕ぎ始める。
……何だったんだろう、今の。
俺と弓月のやり取りを真似ただけ……だよな……?
俺もつい同じ返しをしてしまったけど……あれ、どうなるんだこれ。
頭の中で思考にならない思考がぐるぐると回って溶けていく。
そうして、ぼんやりしながら自宅の道を進んでいると、次なるアクシデントに出会った。
「きゃああああああっ! ひったくりよ! 誰か捕まえて!」
「はっ、バーカ! 誰が捕まるかよ! ──オラッ、どけっ! 殺されてぇのか!」
人通りもそこそこな住宅街。
道の先で、騒動が起こっていた。
五十絡みの女性が道路に倒れている。
その女性を押し倒してバッグを奪ったと思しき男が、手に持ったナイフをちらつかせながら、道行く人々をモーゼのように道端によけさせつつ走ってきた。
男は俺のほうに向かってくる。
いや、別に俺に向かってきているわけじゃないんだろうが、逃走方向が俺のいるほうだったのだ。
俺は「何だこれは?」と思いつつも、その場に自転車を停める。
そして男を待ち構えるように、自転車の前に立った。
男に道を開けてやるという選択肢は、まったく頭に浮かばなかった。
「なっ……!? おい、テメェ! そこをどけっ! 殺されてぇのか!」
俺のすぐ前まで来た男が、手に持ったナイフを振り回してきた。
周囲の人々から、悲鳴やざわめきの声が上がる。
でも男はナイフを当てるつもりはあまりないらしく、その動作はただの脅しのように見えた。
まあ当てる気があったとして、そうそう当たる気もしないんだけど。
せいぜいがコボルドぐらいの動きなので、槍や盾を持っていなくてもどうとでもなる気がしたし。
万一当たったとしても、死ぬとか死なないとか、そんなダメージにはなるはずもないと思った。
俺は男の動きを見切って、ナイフを持ったほうの手首をつかむ。
つかんだ手に少し力を入れて、ナイフを取り落とさせた。
「──ぐぁあああああっ! な、なんだこのバカ力は……!?」
「はい、おとなしくしてください。──すいませーん、誰か110番してもらえますか?」
俺は男を路上に倒して、その上に馬乗りになって取り押さえる。
それから警官が来るまでその場に拘束して、警官が来たら男を引き渡した。
その後、いろいろ事情を聞かれるなどして、解放されたのは男を捕まえてから三十分後ぐらいだった。
時間の無駄をした気がしないでもない。
まあいいけど。
ひったくりに遭った女性からは感謝され、警官からも働きを称えられた。
ちなみに、刃物を持った相手に立ち向かうのは危ないのでやめるようにとも示唆されたが、
あらためて、
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