第40話 中継地点
大扉をくぐった先には、下層へと続く階段があった。
例によって螺旋状に下る階段をぐるりぐるりと下りていくと、やがて階段が終わって、小さな広間へとたどり着く。
小広間の中央には、光り輝く魔法陣があった。
ダンジョンの入り口にある転移魔法陣と同じ形状のものだ。
小広間の向こう側には、さらなる下りの階段が見える。
ここが第四層と第五層の間にある中継地点だろう。
この魔法陣を踏めば、以後はダンジョン入り口の転移魔法陣から、この魔法陣を転移先に選ぶことができるようになるという話だ。
俺たちは三人で同時に魔法陣の上に乗る。
魔法陣が光を放ち、視界が真っ白に染まり──
一瞬の後、俺たちはダンジョン入り口の魔法陣の上にいた。
魔法陣から一度出て、再び乗りなおすと、脳内に選択肢が浮かび上がった。
選択肢は、第一層と第五層。
第五層を選ぶと、先ほどの場所に出た。
前情報にあったとおりの作用だ。
安心した俺たちは、そのまま先に続く階段を下ってみることにした。
やはりぐるりぐるりと下っていくと、その先には──
にわかに信じがたい、しかし前もって得ていた情報どおりの光景が眼前に広がっていた。
「森っすか……? あれ、ここダンジョンの中っすよね?」
完全攻略編を見ない主義の弓月が、こてんと首を傾げる。
知識は持っていた俺もまた、現実として目の前に広がるその光景に圧倒されていた。
石造りの螺旋階段を下ってきた先にあったのは、鬱蒼と木々が生い茂る森林地帯だった。
しかもダンジョン内であるはずだというのに、まるで木漏れ日のような穏やかな光が木々の葉の間から落ちてきていて、幻想的な風景を作り出している。
「ここが第五層、森林層……」
小太刀さんが、ぽつりとつぶやく。
このダンジョンの第一層から第四層までは、通称「洞窟層」と呼ばれていて、そこまでが一つの区切りと見なされている。
そして第五層から先は「森林層」と呼ばれている。
モンスターもこれまでとはガラッと変わり、未知の脅威が待ち受けているのだ。
この森林層に到達することで、
ただ俺たちはそこで、くるりとUターンする。
一人前の世界の入り口を進んでいくのは、また今度。
何しろ今日は、すでにMPが激減している。
この階層には様子見として来ただけで、探索を続けるつもりはなかった。
そんなわけで俺たちは、螺旋階段を上って中継地点まで戻り、魔法陣に乗ってダンジョンを出た。
ダンジョンの外に出ると、時刻はようやく昼時を過ぎた頃。
つまりほとんど真っ昼間だった。
ランチ休憩を取らずにボスに挑んだので、今日はまだ昼食も食べていない。
折角なので、これから洞窟層の突破を祝して、打ち上げをしようという話になった。
しかもそこで、小太刀さんがこんな提案をしてきたのだ。
「あの、良ければうちでパーティをしませんか? 私の家、この近くなんです。おばあちゃんと暮らしていた家なのでわりと広いですし、スーパーで食材を買い込んで料理すれば、お店で食べるよりも安上がりですから」
名案だとばかりに訴えてくる小太刀さん。
どこかちらちらと俺の反応を窺っているようにも見えた。
それを聞いた弓月は、わずかに俺のほうを見てから、訝しむような目を小太刀さんに向ける。
「あの、風音さん、それってどういう……いや、野暮な詮索はやめるっすよ」
だがすぐに、何かを悟ったような顔をして、弓月は首を横に振った。
小太刀さんはそれに、不思議そうに首を傾げていた。
そして二人の視線が、自然と俺に向けられる。
「あ、はい。よろこんで」
俺に采配を投げられたら、こう言うしかなくない?
というわけで俺たちは、ボス攻略成功と洞窟層の突破を祝して、小太刀さんの家でパーティをすることになったのである。
余談だが、俺はゴブリンロードを倒したことで大きな経験値を獲得し、11レベルへとレベルアップしていた。
六槍大地
レベル:11(+1)
経験値:2601/3022
HP :64/64(+4)
MP :32/56(+4)
筋力 :14
耐久力:16(+1)
敏捷力:12(+1)
魔力 :14(+1)
●スキル
【アースヒール】
【マッピング】
【HPアップ(耐久力×4)】
【MPアップ(魔力×4)】
【槍攻撃力アップ(+8)】
【ロックバレット】
【プロテクション】
残りスキルポイント:1
修得可能スキルのリストも、11レベルになって大幅に拡張されたようだ。
だがスキル選びはまた後日にしようと思う。
今日はボス戦に勝利し、洞窟層を踏破したことを素直に祝うとしよう。
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