第35話 第四層・再チャレンジ(2)

 第三層に下りた俺たちは、今度こそ弓月に経験値を与えてレベルアップさせた。


 4レベルから5レベルへと成長した弓月は、【魔力アップ(+1)】の上位スキルである【魔力アップ(+2)】を取得。

 弓月の魔力お化けぶりにさらに拍車がかかった。



弓月火垂

レベル:5(+1)

経験値:131/220

HP :36/36(+4)

MP :58/64(+8)

筋力 :7

耐久力:9(+1)

敏捷力:10(+1)

魔力 :16(+2)

●スキル

【ファイアボルト】

【MPアップ(魔力×4)】

【HPアップ(耐久力×4)】

【魔力アップ(+2)】(Rank up!)

残りスキルポイント:0



 そして俺たちは、満を持して第四層へ。

 螺旋状の階段をぐるりぐるりと下りて、勝負の地へとやってきた。


 第四層の探索を進めながら、弓月がぶるりと震える。


「ううっ、武者震いしてきたっす。うちがやられたら、骨は拾ってほしいっすよ」


「安心しろ、そこまでじゃない。俺と小太刀さんだけでも一戦は勝ってるからな」


「でも『攻略』をできた感じじゃなかったんですよね。だけど今度は火垂ちゃんも加入したし、私と六槍さんもあのときより強くなった。リベンジマッチです」


「おーっ! リベンジマッチするっすよ! ゴブリンシャーマンめ、覚悟してろっす!」


「いや、お前はリベンジ関係ないだろ」


「そうとも言うっす」


 そうして緊張感があるのかないのか分からない感じで第四層を進んでいくと、小太刀さんがぴくりと反応する。


「──来ます、四体!」


 その声に応じて、俺と弓月も身構えたところで、洞窟の先からモンスターの群れが現れた。


 それは俺と小太刀さんが以前に第四層で戦ったときと同じモンスター編成だった。


 すなわち、ゴブリン×1、ホブゴブリン×1、ゴブリンアーチャー×1、ゴブリンシャーマン×1だ。


 例によって、ゴブリンとホブゴブリンが敵前衛、ゴブリンアーチャーとゴブリンシャーマンが敵後衛というフォーメーションで襲い掛かってきた。


 ゴブリンアーチャーが弓に矢をつがえ、ゴブリンシャーマンは赤色の燐光を身にまとわせ始める。


 俺たちの側も、小太刀さんが緑の魔力を、弓月が赤の魔力を身に帯びた。


「──うぉおおおおおっ!」


 俺は、槍と盾を構えて駆け出していく。


 そんな俺に向かってくるのは、ゴブリンとホブゴブリンが一体ずつだ。

 だがそいつらが俺と交戦に入るよりも早く──


「この一撃で──【ウィンドスラッシュ】!」


「落としてみせるっす──【ファイアボルト】!」


 小太刀さんと弓月の攻撃魔法が発動した。


 小太刀さんの【気配察知】によって身構えるのが速かったこともあってか、敵の遠隔攻撃よりもわずかに早い。


 小太刀さんの風の刃がゴブリンアーチャーに、弓月の火炎弾がゴブリンシャーマンにそれぞれ直撃。


 一瞬の後、その二体は黒い靄となって消滅していった。


「やった! これがうちの実力っすよ!」


 弓月の快哉の声が聞こえてくる。


 たしかに大金星だ。

 ゴブリンシャーマンは、普通のゴブリンやアーチャーと比べて耐久力や魔法防御力がいくらか高い。

 それを一撃で落とすんだから大したものだ。


 一方で俺は、ゴブリン、ホブゴブリンとの交戦を始める。


 まずはゴブリンに向かって槍を突き出し、これを一撃で仕留めた。


 その隙に襲い掛かってきたホブゴブリンの攻撃を、どうにか盾で防御する。


 ホブゴブリンの重い攻撃はウッドシールドだけでは防ぎきれなかったが、残るわずかな衝撃力は、レザーヘルムと俺自身の防御力によってすべて吸収された。


 探索者の能力値の一つである「耐久力」は、HPだけでなく物理防御力にも影響するらしい──というのは、ネットに上がっている検証班による仮説だ。


 そこに小太刀さんが、猛烈な速度で滑り込んできた。

 体当たりするようにして二本の短剣をホブゴブリンの胸に埋め込むと、そいつも瞬く間に消滅し、魔石となった。


 四体のモンスターを全滅させた。

 俺はホッと息をつく。


 味方の誰一人、一撃も有効被ダメージなしの完封勝利だ。

 申し分ない結果。


 弓月も駆け寄ってきて、三人でハイタッチをする。


「「「イェーイ!」」」


 さらにパンパンパンと、互いに手を打ち合わせていく。

 さすがの青少年も、もうハンドタッチには慣れました。


「完勝だったな」


「ですね。前回戦ったときとは雲泥の差です」


「ふっふっふ。やはりうちの存在が活きたっすね。このリーサルウェポン火垂ちゃんにかかれば造作もないこと」


「おー、よくやったぞ弓月。えらいえらい」


「うんうん、火垂ちゃんいい子いい子」


「えっ、ちょっ、二人がかりは予想外なんすけどっ! わぷっ、ふにゃっ、ふわぁあああっ……!」


 俺と小太刀さんは、二人がかりで弓月をなで回す。

 すっかり愛玩動物のようにされた弓月は、ぐるぐると目を回してふらふらになった。


 とまあ、そんなわけで、第四層での初戦闘は大勝利に終わった。


 その後の探索も順調に進み、第四層マップの探索済み領域もごりごり広がっていく。


 ちなみにこのマップの形状も、ネットを見れば載ってはいるわけだが。


 その辺はわりとどうでもいいというか、いきなり最短コースを通ってショートカットしても、べつに旨みはそんなにない、と思う。

 一歩一歩、力をつけながら自力で進んでいくのが王道だと思うところだ。


 そうして第四層の探索を続けていると、やがて弓月のレベルがもう一つ上がった。


 弓月は、自分の取得可能スキルのリストを見せて、俺に質問してきた。

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