第21話 ダンジョン探索二日目
ダンジョン用の最低限の衣服を上下揃えて、費用は5000円。
ダンジョン用の靴なんかもあったけど、そのあたりは滅多に破損することはないだろうから、ひとまず購入は控えた。
特殊効果のあるすごい靴とかは、値段が高くて手が出ないしな。
なおダンジョン用の衣服には、
洗濯用の替えを買わずに済むのは地味に助かる。
さてダンジョン用の衣服を買った結果、俺のダンジョン予算の残りは14000円ほどになった。
ほかに装備品を購入しようとすると、「ロングスピア」というショートスピアの一段上の槍系武器が25000円で、これまたちょっと手が出ない。
オヤジさんがサービスで【アイテム鑑定】をしてくれたところ、俺のショートスピアやウッドシールドにはまだ80以上の【耐久値】が残っているらしい。
すぐに新しい武器を買い替える必要はない。
そこで俺は、少しでも戦力アップを図るために、12000円をはたいて「レザーアーマー」を購入することにした。
これで防御力がいくらかアップするはずだ。
もっと強くなりたいと思っても、上を見すぎて焦っては足元をすくわれかねない。
足元から一歩一歩、着実に力を付けていきたい所存。
そうして武具店でひと通りの買い物類が終わったところで、俺と小太刀さんは今度こそダンジョンへと向かった。
ただその前に、後日談を一つ。
あの新田という男の件だが、ダンジョン総合の窓口に相談したところ、さまざまな取り調べがあった後に彼には一定の処罰が下った。
大迫さん──武具店のオヤジさんによると、一発免停だとあの男が逆上して面倒なことになりかねず、犯罪抑止の力としては逆効果になりかねないことが懸念されたのではないかと言っていた。
ともあれ。
あの男はその後、俺や小太刀さんの姿を見ても舌打ちするぐらいのもので、大っぴらにちょっかいを掛けてくることはなくなった。
あいつも免停になるのだけは避けたいのだろう。
***
俺が
探索内容は「順調」の一言だった。
昼前頃からダンジョンに潜った俺と小太刀さんは、第一層と第二層を最短ルートで通過して第三層に直行。
第三層では、遭遇するモンスターの群れを的確に撃破しながら、マップ開拓を進めていった。
戦力的には、昨日の探索時と大差はない。
俺は【槍攻撃力アップ(+2)】を獲得したせいか、コボルド相手なら槍の一撃で倒せることが多くなったのだが、ゴブリン以上の相手だといまだ二発は攻撃を命中させないと倒せない。
ただ俺が攻撃を被弾したときの被ダメージは、レザーアーマーを装備したおかげか体感で三割ほどカットされたように思う。
HPや敏捷性が微増していることもあり、全体的に昨日よりも余裕が大きくなり、【アースヒール】の使用頻度もいくぶんか減った感じはあった。
お弁当やおやつ(小太刀さんの【アイテムボックス】に用意してきた)を食べるなど、適度に休憩を取りながら、第三層の探索を進めること半日ほど。
第三層のマップが三分の二ほど埋まったあたりで、俺たちは下層への階段を発見した。
「第四層への階段、見付けちゃいましたね。今……夜の七時か」
小太刀さんが腕時計を見て、考え込む仕草を見せる。
ちなみにこの腕時計も、魔石のエネルギーを利用して作られたダンジョン用のものらしい。
「どうしましょう、六槍さん。試しに下りてみます?」
「うーん……。でも、帰り道もあるんですよね」
「そうなんですよね~」
すでにだいぶ遅い時間だ。
さらに俺のMPは最大値の半分ほどにまで減少しており、攻撃魔法を多用してきた小太刀さんのMPに至っては残り二割ほどだという。
「あまり無理をしても怖いので、第四層は次の機会にしたい感じはしますね」
「ですか。私もちょっと不安だったので、今日はやめておきましょうか」
そんな方向で話がまとまった。
この日のダンジョン探索は、もう少しだけ第三層のマップを埋める方向で進め、しかる後に帰還することになった。
ダンジョンを出たのは夜の九時過ぎだった。
例によってダンジョン総合案内の魔石換金窓口に行って、倒したモンスターの魔石を買い取ってもらう。
結果、俺と小太刀さんはそれぞれ16740円の現金を得た。
さらに今日のダンジョン探索中に、
これは小太刀さんがソロ探索の際に使うとのことで、俺に2250円を渡して三本とも小太刀さんが引き取ることになった。
そんなわけで、今日のダンジョン探索による俺の収入は、合計18990円となった。
温かい……懐が温かいよ……。
また今日の探索中に、俺と小太刀さんはそれぞれレベルが1ずつ上がっていた。
俺がレベル5から6に、小太刀さんがレベル9から10になった。
俺の取得スキルは【アイテムボックス】【ロックバレット】【槍攻撃力アップ(+4)】の三択で迷ったが、ここは【槍攻撃力アップ(+4)】に賭けてみた。
それでゴブリンを一撃で倒せるようになったら儲けものだと思ったのだが、結果はドンピシャ。
レベルアップ後の戦闘で遭遇したゴブリンを、俺のショートスピアの一撃で倒すことに成功した。
その後の戦闘の結果を見たところ、まだ確殺ではないようだが、それでもゴブリンを高確率で一撃撃破できるようになったのは大きな進歩だ。
ダンジョンを出たときの俺のステータスは、こんな具合だった。
六槍大地
レベル:6(+1)
経験値:284/355
HP :48/48(+4)
MP :20/40(+4)
筋力 :11(+1)
耐久力:12(+1)
敏捷力:9
魔力 :10(+1)
●スキル
【アースヒール】
【マッピング】
【HPアップ(耐久力×4)】
【MPアップ(魔力×4)】
【槍攻撃力アップ(+4)】
残りスキルポイント:0
着実にレベルアップしている。
焦らず地道に頑張っていこう。
その後、遅い夕食を小太刀さんと一緒に食べに行って、彼女とはお別れの時間になった。
明日からはフルタイム五連チャンでバイトが入っているので、次の休みまではパーティを組んでのダンジョン探索はお預けだ。
「それじゃ小太刀さん、また来週」
「はい、また来週です。……でも六槍さんがいないダンジョン探索は、私もう、寂しくて死んじゃうかもです。万が一にでも来週の約束をすっぽかされたら、もらった連絡先に鬼電しますからね?」
そう上目遣いで言ってくる小太刀さん。
かわいい。俺を殺す気か。
俺は内心を表に出さないよう、努めて平静を保ちながら返事をする。
「それは怖い。でも俺も、来週また小太刀さんと一緒にダンジョンに潜れるの、楽しみにしてますから。今日も楽しかったです。ありがとうございました」
「えへへっ、こちらこそ。ありがとうございました」
そうして小太刀さんと別れ、自転車に乗って自宅を目指す。
明日からはまたバイトだが──
俺はバイト先に退職願いを出そうと、心に決めていた。
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