第12話 初めてのパーティ行動(5)

 第二層での探索を続けていく小太刀さんと俺。

 探索者シーカーが二人いるだけあって、その流れは順調だった。


 最初のゴブリン一体の次に遭遇したのは、ゴブリン二体の編成だ。

 これは小太刀さんも加勢して、一人一体ずつ撃破する。


 小太刀さんはコボルドばかりか、ゴブリンも一手で瞬殺していた。

 短剣【二刀流】の風音お姉ちゃん、クッソ強い。


 一方で俺は、自分の担当のゴブリンを撃破するまでに、ゴブリンの攻撃を一発もらってしまった。


 右の太ももを深々と刺されてHPが8点減少。痛い。

【アースヒール】を使ったら全快したが、小太刀さんとの戦力差がもろに見えてしまった感じがして、少し悔しかった。


 次に遭遇したのはコボルド三体。

 小太刀さんはちゃちゃっと一体を撃破して、あとは俺が残り二体のコボルドを相手にどう立ち回るかを見物していた。


 この戦いでも俺は、コボルドの攻撃を一発被弾。

 腹部に受けた一撃は、俺のHPを7点減少させた。やっぱり痛い。


 以前にコボルドの攻撃を受けたときは4点ダメージだったけど、被ダメージは被弾箇所にもよるのだろうか?

 よく分からない。


 これも【アースヒール】で回復。HPは全快。

 一方で、俺のMPは「16/24」まで減少。

 昼食休みを取ったせいか、午後の探索開始時には最大値まで回復していたのだが、わりとごりごり削られている。


 ちなみに俺が、「小太刀さんって意外とスパルタですね」と漏らすと、小太刀さんはわたわたして、「経験値を取ったら悪いなって思って、援護は最低限にしていたんですけど……すみません」と言ってしゅんとしてしまった。


 加えて、拗ねたような上目遣いで「……六槍さんこそ、意外といじめっ子ですか?」と言ってきたので、俺の胸はキュンキュンして痛くなった。

 俺の平常心は瀕死だった。


「小太刀さんはあくまでもビジネスパートナーだからな」と、俺は心の中で念仏のように唱えていた。

 俺の中の男子がうるさすぎる。

 あと小太刀さんが無自覚(?)小悪魔すぎる。


 そして第二層に潜ってから、四回目の遭遇。

 現れたのは、これまでに見たことのない大柄なモンスターだった。


 どのぐらい大柄かというと、コボルドやゴブリンが人間の子供並みの小柄さなのに対して、そいつは鍛え上げた大人の格闘家という感じ。


 小太刀さんが二本の短剣を構えてそいつを見据え、こう口にする。


「ホブゴブリンです。私がダメージを与えるので、六槍さんがトドメを刺してください。間違って倒しちゃったらすみません」


 身を低くした小太刀さんは地面を蹴り、例の恐ろしい敏捷性でホブゴブリンに向かっていった。


 ホブゴブリンが手にしているのは、中型の片手剣だ。

 それを暴力的な勢いで振り回してきたが、小太刀さんは攻撃を俊敏にかわして、相手の懐に潜り込む。


「──はあっ!」


 凛とした気合の声とともに、左右の短剣で連続攻撃。

 ホブゴブリンは二つの斬撃によって鋭く切り裂かれる。


「六槍さん!」


「了解です!」


 俺は小太刀さんが素早く飛び退いたところに踏み込んで、槍で一撃。

 ホブゴブリンは回避しようとしたが間に合わず、俺の槍はその腹部に突き刺さった。


 それがトドメになったようだ。

 ホブゴブリンは黒い靄になって消滅し、あとには──


「あっ、【宝箱トレジャーボックス】が出ましたね。ラッキー♪」


 小太刀さんが声を躍らせる。

 倒されたホブゴブリンがいた場所には、少し大きめの魔石に加えて、【宝箱】が出現していた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る