第5話 初めてのダンジョン探索(3)

 その後もだだっ広いダンジョンを探索し続けること、およそ一時間。


 この間に二度ほどコボルドに遭遇し、いずれも無傷での撃退に成功した。

 敏捷力が上がったせいか心なしか体の動きが軽くなり、対応がいくらかやりやすくなった気がする。


 とはいえ──


「ついに来たか、コボルド二体」


 そろそろ昼食のために一度ダンジョンを出ようかと思っていた頃のこと。

 ついに二体のコボルドと遭遇する事態が起こった。


 武具店のおっさんから、二体以上と遭遇したときには気を付けろと言われていたが、それがなくても厄介さはよく分かる。


 一体のコボルドを二回相手にするのと、二体のコボルドを同時に相手にするのとでは、難易度が雲泥の差だ。


 どこか二体が同時に襲い掛かって来られないような狭い通路でもあればいいのだが、そんなものは近場では見つからない。


 洞窟の通路、わりと広いんだよな。

 平均的には、幅も高さも俺の背丈の二倍ぐらいはある感じだ。


 そうやって周囲を軽く見回している間にも、二体のコボルドは俺に向かって駆け寄ってくる。


「ま、やるしかないか」


 厄介だとは思うが、負ける気はしない。

 俺は槍を手に、二体のコボルドを真正面から迎え撃つことにした。



 ***



「痛ててて……」


 数十秒の死闘の後、二体のコボルドは二個の魔石へと変わっていた。


 だが俺のほうも、無傷ではいられなかった。

 敵の攻撃をさばききれずに、一体のコボルドの短剣を左肩に受けてしまったのだ。


 すぐに命を落とすようなダメージじゃないが、痛いものは痛いし、傷口からは赤い血がにじんで衣服を汚している。


 ただ探索者シーカーは一般人と比べてはるかに死ににくく、自然治癒力も比べ物にならないほど高いらしい。


 深手の切り傷や刺し傷でも、一分と待たずに大きな流血はなくなるし、命を落とさない限りは損傷した臓器だって一晩休めば元通りに修復しうるという。

 すでに人間じゃないな。


 そんなわけで、短剣で肩をぐさりと刺されたぐらいなら、探索者シーカーにとって致命傷にはほど遠いわけだ。

 治癒する前にステータスを開いてHPを確認するぐらいの余裕は普通にある。


 なお確認したところ、HPは「20/24」になっていた。

 これでHPが4点減少か。把握。


 初めてのダメージによる精神的ショックも抜け、今やこのまま活動を続けてもいいぐらいの状態ではあったが、さすがにそれもどうかと思うので魔法を使って回復することにした。


「【アースヒール】」


 傷口に手を当てて回復魔法を使うと、スッと痛みが引いて体が楽になった。

 服をめくって見てみると、傷口はどこを刺されたのかも分からないぐらい綺麗にふさがっていた。


 ステータスを確認すると、HPが「24/24」、MPが「17/21」。

【アースヒール】の消費MPは4。

 回復量は──よく分からないが、少なくとも4点の負傷を全快する程度ではあるな。


「よし、一度帰ろう」


 俺は二体のコボルドの魔石を拾って財布に放り込んでから、帰路をたどった。


 ステータス的にはこのまま進んでもまったく問題ないと思うが、昼飯を持ってきていないのだ。

 腹が減っては戦はできぬ。

 というわけで一度帰還だ。


 ちなみに帰り際にも一体のコボルドと遭遇して、これを撃退。

 このタイミングでレベルアップした。




六槍大地

レベル:3(+1)

経験値:32/70

HP :27/27(+3)

MP :20/24(+3)

筋力 :9(+1)

耐久力:9(+1)

敏捷力:7

魔力 :8(+1)

●スキル

【アースヒール】

【マッピング】

残りスキルポイント:1(+1)




 レベルが2から3に上がって、筋力、耐久力、魔力が1ポイントずつ上昇。

 スキルポイントも、やはり1ポイント獲得。


 HPやMPは、特にそれ系のスキルを持っていなければ「耐久力×3」「魔力×3」になるとのことで、3ポイントずつ上昇していた。


 スキルの取得はダンジョンを出てからでいいだろう。


 俺は歩いてダンジョンの入り口にある魔法陣まで戻り、川べりの土手にある洞窟に転移。


 初めてのダンジョン探索を終えて、数時間ぶりの地上へと帰還した。

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