第14話:フルーツゼリーとプリンの触感
「大学生……」
いつも冷静な眼鏡の青年にしては珍しく、形の崩れた笑顔を見せる。
「そうだよん。みう、現役の大学生だにゃん♡華のJDよJD」
だとしたら、どうして高校二年生であるはずの
それだけ身体の線が細いということなのだろうが、そんな疑問よりも、もっと核心を突いた質問をする。
「もしかして
「ご名答!もしかして学生証見た?!みうの財布から引き抜いちゃった?!」
「……僕が通う大学と同じ学校だからですよ」
ここまで如実に表情が変わる
乙牌大学とは
二つあるキャンパスのうちの地武差キャンパスでは、歴史学・語学・人文学・心理学などの文系科目を中心とした研究が行われている。
「えーっ。偶然!みうは文学部の歴史学科だけど、あなたは何処の所属?」
「……文学部の日本文学科」
「うそーっ!みうと学部が同じにゃん!!みうは三年生だけど、あなたは?」
「……二年生」
「あらん♡みうの方が先輩ってことかにゃん?」
俯いているので顔は見えないが少し悔しそうだ。握った拳はぷるぷる震えている。
「なんだ、同じ学校なのか。だったら、この猫の処遇は決まったようなものだな」
きゅっ、きゅっ、きゅーっ。
ホワイトボードの上をマジックが走る。
「異能力を持っていないため
ホワイトボードの上で赤い丸で囲まれた文字を見て眼鏡の青年の顔色が悪くなる。
「
「ちょっ!!ちょっと待ってくださいよ!!」
無論、
「そもそもの話、彼女は我々の味方というわけではないんですよ?!ここまで温情を掛ける必要はありませんよね?!」
「確かにその通りだが、」
チラッ。
支部長様から視線で説明するように促されたため、『『貧乳派』の救世主』が話を引き継ぐ。
「元はと言えば、俺が『『貧乳派』の救世主』としての力を使ったせいでこうなったんだから、俺たちが責任を持って見張るべきだと思っています」
その性癖の具現とも言える能力を消し去ってしまったのだから、抵抗する手段がない彼女に寄り添うべきだ。
「何かペットみたいな扱いを受けている気がするにゃん。ま、ネコミミネコシッポを愛するみうは、その待遇も別に嫌じゃないけど。寧ろ三食昼寝付きで養って欲しいくらいだわ。……というわけで」
首を傾けて髪を揺らしながら触爪は破顔一笑する。
「よろしくね後輩くん♡」
その笑顔は、顎の下を撫でられて気持ち良さそうに目を細める猫に似ていた。
☆★☆★☆
「…………」
ぶっちゃけお疲れだった。
空気が抜けて萎んだ風船のように机に
製鉄所を案内されたり、触爪を討伐しに行ったり、彼女の処遇を決定するために会議を開いたりとイベント盛り沢山だったが、全て月曜日の放課後、しかも夕方に起こった出来事だ。
『一日』という時間の流れがゆっくりに感じすぎて不安になってくる。
「どうした純多?おっぱい成分が足りないのか?だからって
心配になったのか
「……別に胸が揉みたすぎてこうなっているわけじゃねぇよ。まぁ、揉みたくないわけじゃないけど」
「そんな純多にだけ特別に、こいつをお
何も頼んでもないのに頭の脇に何かが置かれる。
「……これは?」
「
「なん……、だと……!?」
そう聞いて黙っているわけにはいかない。
がばりと頭を起こす。
「そして同じく備中製菓が作った、このドデカプリンは、巨乳を揉んだ時に触感に似ている」
ごとり、とフルーツゼリーに並んで机の上に置かれたのは、茶碗をひっくり返したくらいの容量を持つプリンだ。
「……聴くまでもないと思うが、純多はどちらが欲しい?」
「ちょっと待て!」
選択肢は決まっているが、どうしても確認しておきたいことがあった。しっかりと籾時板の目を見ながら話す。
「この二つのデザートが胸を揉んだ時の感触に似ているって判断できるということは、
性欲に負けて通り魔的におっぱいを揉んでしまったのか。
それとも純多の知らないうちに、あらゆるおっぱいを揉み放題のハーレム環境を作り上げていたというのか。
親友が犯罪に手を染めるようなことがあってはならないため、真剣な顔で問う。
「ふっ……。残念ながら、どちらの機会もなかったさ。だから、」
早押しボタンを押すかのように巨大プリンの上に手を優しく被せる。
「「そうじゃないか?」というオレの独断と偏見で判断したんだぜい!オレの欲求を満たしたいがために、誰かが傷付くようなことがあっちゃいけないからなっ!!」
「
「おっぱいを揉んだ気になりたい」という飽くなき探求心は、誰だって胸の内に秘めている。
親友の一言でその事実を確認しながら、純多はフルーツゼリーを掌で包むようにして握る。
ぷにぷにとした触感は発育途中の胸を撫でているようで、ゼリーの中に埋め込まれたナタデココをプラスチックの容器越しに触る触感は、乳房を優しく
「おぉお……っ!!確かに胸を揉んでいる気分になれるな!!」
「だろう?この界隈では結構有名なデザートだぜい?」
「Oh……、これならおっぱい饅頭じゃなくて、おっぱいゼリーとおっぱいプリンですネ」
背中から掛けられた声に二人の手の動きが止まる。
「おっぱいで思い出しましタ。ワタシがジュンタにあげたおっぱい饅頭、デリシャスでしタ?」
声の主を探ると、髪を二つに縛った金髪の少女が惣菜パンの入ったビニール袋を提げて立っていた。
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