第3話 秘密の特訓



 タイガ先輩も青葉BL学園の学生寮に住んでいた。


 卒業したら、旅に出たいと言っていたけど、タイガ先輩は長女では無いので問題ないらしい。


僕の家も、年の離れた姉がいるので、家を出たとしても大丈夫だろう。


 男の子を探す旅って言ってたけど、僕の事は……何もなかった事にしよう。



 ――それが良い。



 この国では、あまり見かけないけど、この世界には魔法があるらしい。


 らしいというのは、魔法使いを見たことが無かったからだ。


 中には、魔法大国というのもあるらしいけど、帝国の上層部に数人いるらしいということ以外知らなかった。


 なので、魔法の授業などがあるはずも無く、自分が魔法を使えるかも分からなかった。


「ラターシャ。そろそろ魔法を教えてやろう」


 タイガ先輩はそう言うと、ギャラリーを避けて人のいない地下訓練場へと連れて行ってくれた。


「ここならいいだろう?俺の秘密の特訓場なんだ」


「先輩まさか……エッチなことを……」


 僕は、タイガ先輩と秘密の場所で二人っきりって言うと、……そう考えてしまった。


「しねーし!して欲しいのかよ!?」


「いやぁ……」


 どうだろう?キスはしてるけど、これ以上はダメな気がする。


「ふざけてると、本当にやるぞ?」


「はい……すみません」


「いいか?この国には、魔法使いがほとんどいねぇ、それは教育してねーからだ!」


「教えていない?」


「帝国は恐れているのさ、魔法使いによる反乱をな」


 確かに魔法は、強力な武器になり得るだろうけど……。


「それに、この学園は才能なしと判断されたものが集まった学校だ」


「才能無し?」


「魔法は才能で決まるって信じられているからな?」


「教会の奴らが持ってきた水晶に触ったことあるだろ?」


「ああ……あれ?」


 突然家にやってきて、触れろって言われた奴か?


「あれは、その時の魔力量を測るもんだ」


「魔力量って魔法を使うのに必要なんだよね?」


「普通はな?……なぁ……俺達は何者だ?」


 ……僕らに共通する事って言ったらあれしかない。


「転生者?」


「そうだ!」


 タイガ先輩が言うには、転生者には特別な力があるらしい。

 それは、水晶で魔力量を測っても分からないんだとか。


 僕の特別な力って、男の子になれる?

 いや、あれは呪いの類いじゃないのか?


「例えばそうだな……成長しやすいとか、限界が無いとかだな」


「結構地味ですね……」


「成長速度をバカにするなよ?人よりも早く強くなれるんだぜ?頑張ればな?」


 なるほど、僕はこれまでがんばって来なかった。だから分からなかったんだ。


「だから、これからはスパルタで行くぜ?」


「はい……」


「この地下訓練場は俺が作ったんだが、迷宮に繋がっている。ダンジョンだな」


「ダンジョン……こんな所に?」


「いいか?俺が魔物を相手するから、とにかく石を持って相手に投げろ!」


「ええええ!?」


「よし、石を集めたら行くぜ!」


 そういうと、タイガ先輩はダンジョンの中に入って行った。


「ちょっと待って下さい!せんぱ〜い!」


 タイガ先輩はどんどん奥へ行ってしまうので、僕は、はぐれないように必死について行った。


「ラターシャ!魔物だ!石を投げろ!」


「は、はい!」


 体長二メートルはありそうなモグラのような魔物だった。


「土モグラだ!爪に気をつけろ!近づくなよ?」


 僕は必死に石を投げた。何個かは当たったようだ。


「ピギャァアアアア!!!」


「上出来だ!」


 タイガ先輩はそう言うと、握っていた片手剣を構えると、技を放った。


「大河流一の型!虎流咆哮斬!!」


「ギャァアアアアアア!!!」


 タイガ先輩が斬撃を放った時、虎の津波が見えたような気がした。


「凄い……」


 モグラの魔物は、断末魔を上げて両断され、石ころを残して消えて行った。


「え?消えた?」


「不思議だろ?ここの魔物は、正確に言うと生物じゃないんだ。魔法生物と言った方がいいかもな?だから、倒すと魔石を残して消えて行くんだぜ?」


「なんか。ゲームみたいですね?」


「ゲームじゃねぇ!これは、現実だ。ゲームだと思っていると死ぬぞ?」


 タイガ先輩は、真剣な目で僕を睨んで来た。


「すみません……」


「気を引き締めろよ?お前はまだ弱いんだ……」


 その通りだ。僕は強くなる事を考えてこなかった。


 女の子であることに慣れ過ぎてしまったんだ。


 それから、僕は先輩の後について、魔物に石を投げながらダンジョンを降りて行った。


 10階層ほど降りた時、先輩は立ち止まった。


「ここで、レベル上げるぞ?」


「レベル?」


「実際には見えねぇがな?戦闘レベルが上がると体がふわっとするから分かるだろう?」


 確かに、さっきから僕は魔物が倒れる度にふわっとした感じがしていた。あれがレベルアップなのだろう。


「この階層は、効率がいいんだわ。ここの魔物は、多分経験値?ってのが多いんじゃねぇかな」


 某有名なゲームのメ〇ルスライムとか、そういった魔物の事を言っているのだろう。


 確かに、ここの魔物は効率が良かった。


 ただ……多すぎる!!多いよ?タイガ先輩?


 そこは、オレンジ色のスライムが大量に出てくる階層だった。


「魔法を見せてやるよ」


「え?」


 タイガ先輩はそう言うと、大量に出て来たスライムに魔法を放った。


「フリーズ!」


 目の前に大量にいたスライムは。全て凍り付いてしまった。


「何をしている!早く今のうちに攻撃しろ!石でも叩いてもいいから!」


「は、はい!」


 僕は、凍り付いたスライム達に必死に攻撃を加えていった。

 すると、凍っていたスライムは石を残して消えていき、その度に僕はレベルアップしていった。


 僕がラストアタックしたので、経験値が多く入ったのかレベルが上がるのが今までより早く感じた。


「おっと、ドロップだ」


「ドロップですか?」


 言われた方を見ると、どうやら短剣のようなものが落ちていた。


「これは、お前に丁度いいだろう。持っておけ!」


 先輩に渡された銀色の短剣は、重くも無く僕でも扱えそうだった。


「はい!ありがとうございます!」


「よし!次のが来たぞ!」


 オレンジのスライムは、際限なく出て来た。その度にタイガ先輩が凍らせて、僕は短剣で止めを刺していった。


 何度も同じ事を繰り返し、レベルアップしなくなった頃、タイガ先輩も魔法の使いすぎなのか辛そうな顔をしていた。


「今日は、ここまでだ」


「はぁ……はぁ……ありがとう……ございます……はぁ……」


 帰り道は、僕も戦闘に参加したので、あっという間に元の地下訓練場に戻って来た。


「ラターシャ?自分が強くなったのを感じるか?」


「はい……なんとなくですが」


「今日一日で基礎能力は、随分と上がったはずだ。明日は、魔法を教えてやる」


 魔法……僕が魔法を使う事になるなんて考えたことも無かった。


「はい!お願いします!」


 秘密の特訓の一日目にして、僕はかなり強くなった気がした。










読者様へ


ここまでお読みいただきありがとうございます。


これは、男の子が好きな男の子が女の子に転生して、女の子しかいない世界で男役として頑張る物語です。……多分?


続きが気になると感じて下さいましたら、

☆♡にてコメント、応援よろしくお願いします。

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