第2話 帝国の虎
帝都の学園に入学してからと言うもの、ラブレターは毎日届くし、屋上や裏庭に呼ばれる事も多かった。
「ラターシャ様!好きです!付き合って下さい!」
「ごめんね?僕は特定の女の子は作らないんだ」
この
しかし、慣れというのは凄いもので、学園の女の子美少年達は、僕にも男の子にしか見えなくなって来ていた。
その中でも一際異彩を放っていたのが、昨年度帝国武道会で優勝した事がある三年生の、通称帝国の虎。タイガ・エルドラン様だった。
武道会で優勝した実力は本物で、帝国最強とは、彼女の事を指す言葉になっていた。
僕は女の子に興味は無かったけど、タイガ様だけは違った。
タイガ様は、何もかもが格好いいのだ。
そして、タイガ様も僕と同じように、女の子に興味がないようで、告白してくる女の子を避けているようだった。
「ふん……女は軟弱で、好かん……」
僕がタイガ様に見惚れていると……タイガ様から話しかけられた。
「うん?君は……ラターシャ君か?」
「はい!ラターシャです!」
「君の噂は聞いているよ?君も女の子が苦手なのだろう?」
「そう……なんです」
「僕もだよ?僕はね……世界のどこかに本当の男の子がいると信じているんだ」
タイガ様は、金髪碧眼で髪の毛は後ろで纏めていた。僕は明るい茶髪で茶目なのでタイガ様が羨ましくもあり、憧れの人だった。
「先輩もですか?僕もです」
「そうか、君とは気が合いそうだな」
「そうですね……僕もそう思います」
「僕は、卒業したら国を出て世界を周るつもりだ。その為に今は強くなるために力を付けているんだ」
タイガ先輩が強いのはそういう事だったのか……国を出て世界を巡るか……いいかもしれない。
「僕も連れて行って欲しいです!」
「ふむ……ならば強くなれ!弱い奴は連れては行けんからな?」
「分かりました……僕、強くなります!」
「最初は肝心だからな、僕が修行を付けてやる」
「はい!ありがとうございます!」
そして、僕はタイガ先輩の元、強くなる為に修行を始めたんだ。
◇◇
タイガ先輩は、とにかく強かった。帝国最強と呼ばれるだけの事はあった。
「ラターシャは、何か運動はやったことあるのかい?」
空手と剣道だったら転生前にやっていたな……。でも、この世界には剣や魔法があるらしいので、空手は無いだろう。
「そうですね……剣道を少し……」
「剣道?」
「いえ、剣術を少し……」
やばい、剣道はこっちの世界には存在しないんだ。多分……。
「…………そうか」
「そうですね」
「なら、サッカーは得意か?」
「集団競技は苦手ですね、ボールを追いかけるのがやっとで……」
うん?サッカーは、この世界に無いよな?
タイガ先輩は、ニヤリと笑っていた。
まさか……先輩は転生者なのか?
「どうやら、もう一度自己紹介をやり直した方がいいみたいだな?」
「いいんですか?前世なんか明かして?」
「気にしねぇよ?そんじゃ、俺からでいいか?」
タイガ先輩は、口調を変えた。多分これが本来のタイガ先輩なんだろう。
「俺の名前は、
その名前を聞いた時、僕の心臓は高鳴った。僕が恋焦がれた夕人先輩の名前だったからだ。
そして……涙が止まらなかった。
「夕人先輩……会いたかったです……僕の名前は……
「は!?だいせい?お前が?マジか!?」
「先輩……会いたかったです!」
僕は、先輩に抱きついて泣き続けた。
「泣き虫のところは、変わんねーな?だいせー」
「せんぱい……うう……バイクで死ぬなんて酷いですよ……先輩の事好きだったのに……」
「悪りぃな……ってかお前!俺の事好きだったのか!?」
「……好きでしたよ?キスしたいくらいには……」
「……それって今からじゃダメか?」
先輩は、頭を掻きながら、珍しく恥じらいの表情を見せた。
「え?」
「だから、俺もお前が好きだった!前世からな!き……キスしたいくらいには?」
「先輩……今からでもいいですよ?」
「だいせー……可愛くなりやがって……」
「それは、先輩もですよ?可愛くて、格好いいいです♡」
この日僕は、憧れの夕人先輩と初めてキスをした。
◇◇
男役同士が付き合っていると言う噂は、すぐに学校中に広まった。
学園人気ナンバーワンのタイガ先輩とナンバーツーの僕、ラターシャは、いつも交際を断っていたので、
「ラターシャ!打ち込みが甘い!!もっと激しく!腰を使え!」
「はい!」
「キャァアアアアアアア!!」
「ふぅ……休憩にしようか?」
「はぁはぁ……はい……先輩」
「怪我してるじゃ無いか?ちょっと見せてみろ……」
「あ……」
タイガ先輩は、僕の傷に口を当てるとペロペロと舐めてくれた。ちょっとくすぐったかった。
「キャアアアアア!舐めてますわ!!」
外野がうるさいけど、タイガ先輩との稽古には、ギャラリーが集まってきていつもこんな感じだ。
「どうした?物欲しそうな顔して?」
「何でもないです……」
僕がそう言って顔を背けると……タイガ先輩は僕の顎をくいっと持ち上げて、濃厚なキスをしてきた。
「んん……先輩?」
「キャアアアアア!!キスですわ!!」
恥ずかしいからやめて欲しい……。
「少しは素直になった方がいいぞ?」
「先輩は強引です……」
「死んだら後悔すら出来なくなるからな?」
その言葉は、死んだ事があるから、とても重い一言だった。
先輩は女の子に生まれ変わっても、先輩のままだった。
僕は男の子が好きだった。そして、先輩を好きになった。
でも、最近はこう思うようになったんだ。
僕は、先輩だから好きになったんじゃ無いかって。
僕は、女の子になっても女の子の先輩が好きなんだ。
……そう心の中で思った時、突然僕の体は変化していた。
おかしい……股間の辺りがムズムズする。
触ってみると……男の子のアレが生えていた。
「ええええええ!?」
僕、男の子になってる?なんで?こんな時に?
まさか……代償ってこの事を言っていたのか?
男の子じゃなくて、女の子を好きになると、男に戻る。
一見するといいことのように見えるけど、ここは女の子しかいない国なんだよ?
捕まれば種馬にされるか、投獄されるか分からない。
男の子は、いない事になっているんだから……。
やばいやばいやばいやばいやばい!!
とにかく、心を沈めよう。
そして、瞑想すること数分……僕の体は、元の女の子の体に戻っていた。
「良かった……戻ったよ……」
この事は、秘密にしなくてはならない。
僕が男の子になれる事がバレたらやばいことになるのは目に見えていた。
読者様へ
ここまでお読みいただきありがとうございます。
これは、男の子が好きな男の子が、男の子のいない?世界に転生してしまった物語です。
続きが気になると感じて下さいましたら、
☆♡にてコメント、応援よろしくお願いします。
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