部隊士気とは、上と下のヒト達による相乗効果!


「ドロテ分隊長。休憩終わりました」

「オッケー。じゃあドニくんとこーたい。ドニくん、休憩終わったらチョクセツ、コリーナちゃんと交代ね」


 わたし達がいるのは美術室の受付エントランスコーナーだ。ここにいるのは三人。わたしことドロテ•ド•オーバン魔導師と、シモーヌ•サン=リラ•アテニャン一等術師、そしてドニ•ドミニク•ペロー魔術師長だ。

 受付と、担当するコーナーのサイショサイちょーじゅーよーであるため、人員は厳選している。

 ちなみに魔術師の子達のローブの着こなしは、わたし達魔導師とは違って

 

美術室きんしゃの内訳は以下である。


 庭園や、美術室の建物全体の管理、警備は騎士団が担当。

 絵画コーナー、彫刻コーナー、陶芸コーナーは魔導分隊それぞれが分担し、二階にある特設された工芸品などの文化物コーナーや、受付業務は三日交代で魔導分隊がけんにんする。


「よっしゃあ! 昼メシだ!」

「ドニくん? 他の子たちの休憩もあるんだから、時間はキッチリ守ってねー」

「当たり前っしょ!」


 わたしたち第三分隊ドロテ隊は絵画コーナー担当で、今日は受付業務も担当、つまり、美術室の顔だ。隊員達にはムダなストレスを与えないように接している。


 シモーヌちゃんはできる子だ。

 予備訓練前の顔合わせの時の、あの怯えた表情からは想像できないような技能と冷静さを訓練で発揮したため、受付業務にバッテキした。わたしの下についてる間、色々な事を仕込みたい。


 ドニくんとは五度目の一緒の勤務。

 ちょっとリラックスし過ぎ感はあるけど、お仕事はキッチリやる。ナカナカに頼もしい隊員だ。


 この二人以外も真面目な子達が多いし、今回の勤務は分隊員に恵まれた。十日後の国王サマのごライヒンにも十分に対応できるだろう。だからわたしも、彼らがなかだるみしないように、しっかりと分隊長を果たすのだ。

 もし彼らがミスをしたとしてもそれは分隊長であるわたしのミスで、それが起こらないようにする事が、わたしのセキニンセキである。


 ドニくんが詰め所に戻ろうと杖を取った時、入り口から騎士団の若い兵士がやってきた。めんぼおはなく面甲が開いた兜から、幼そうな顔がのぞく。たぶんララの言う「可愛い子」とは、この子の事だ。


「オーバン分隊長殿!」

「騎士団員様お疲れ様です。で、どうしました?」


 騎士団員とは所属が別。だから序列も階級も関係ないため、わたしはそれなりにてーねーに対応する。


「城門から伝令ゴーレムが飛んできました。これから貴族様がいらっしゃるようです」

「うわ、まじで? なんでこのタイミングで……」


 王都宮廷に住む貴族達のスケジュールは、わたし達上級の使用人の中で掌握され共有されている。でもたまに、城外からこういうイレギュラーな人達が来る事もあるため、気が抜けない。


「今から約二十分後に侯爵様と男爵様が来られますので、じょうの準備をお願いします」

「侯爵サマと男爵サマ? もしや……!」

「では! 自分はこれで失礼します!」


 可愛い兵士は左手で持つサーベルの柄に右手をサッと移す敬礼を行うと、外にある警備室へ去っていった。

 

「コリーナちゃんと交代はシモーヌちゃん、アナタが行って。ドニくんは二十分後にわたし達と儀仗。休憩は……ゴメン。コリーナちゃんの後。——あ、そうそう。シモーヌちゃん、コリーナちゃんに休憩後に受付ココに来るよう言っておいて」

「うわぁ、まじかぁ! 昼メシ〜」

「分隊長。儀仗中の業務はどうしますか?」

「大丈夫。その間は警備室のヒトがやってくれるから」

「了解しました。では、行って参ります」 


 シモーヌちゃんが絵画コーナーへ駆けて行った。こーゆーアイ、三歩以上の移動は駆け足だ。


「ドロテたいちょ〜、俺ダルイっすわ〜」

「つべこべ言わない! あんたの、期待してるからね」

「へいへい〜」


 わたしの分隊員にドニくんがいたのはこーうんだ。

 ただ、アルテュール隊長が魔導隊長なのは最悪。彼はあの服装で儀仗をするのだ。わたしの服装もあんまり人の事は言えないけど、かなり、恥ずかしい。

 いや、わたしのカンカクがおかしいのかな?

 


 

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