うーん、わたしって気さくな魔導師だ。
コンコンッ。
ここは美術室の裏側に
「はいはいー。ちょっとお待ちをー」
わたしは気の抜けた声で応じ、布で
「うわ、汗だくじゃない? 相変わらずね、ドロテ」
鍵が開けられたドアの外にいたのは、ララ•サン=ウーリード•クレマンである。美術室魔導隊における第二分隊長だ。序列は九十二番。カサンドルよりもさらに胸をはだけており、薄い肌色が目立つ。腰のくびれに密着するローブの
彼女と同じ勤務になるのは久しぶりだ。
ララは勝手に部屋に入り、わたしのベッドの
「相変わらずってどーゆーこと? 魔導師が鍛えるのは
「はぁ、まじめねえ……。いくらスタイルをキープしても
「うっさいわねえ。あんたはそーゆーの意識しすぎ」
ララはクレマン家の三女である。大人しくお屋敷で
「いいじゃない? ワタシが魔術師になったのは、ワイルドな騎士サマと楽しむためよ?」
「ハイハイ、それで? あんたのおめがねにかなう
ララの露出が多いのはわたしと違って見たまんま。その
「それがね? ワイルドなヒトは隊長サンしかいなかったんだけど、ちょっと可愛い子がいたのよね? 一人で行くのもアレだから、アナタも一緒に遊びに行かない?」
「……あんた今朝、魔導師の心得をちゃんと復唱してたよね?」
「あんなの言ってるだけでいいの。だから下の魔術師に『お堅いのが
「どーせあんたが
ララはわたしよりも三つ歳上だけど、わたしの後輩。何年か前に部下として、わたしの指揮下で働いてたこともある。わたしたちが互いにフレンドリーなのは、わたしが魔術師たちに「わたしにデカい顔したければわたしよりも偉くなれ」的なことを言い続けてたから。
ぶっちゃけ、わたしがこの地位にいるのはこの国の「生まれや年齢よりも能力、能力よりも努力を評価する」ってゆー、ある種のアピールだ。そんな国のアリバイづくりで宮廷勤めになったわたしが舐められないためには、常に
んで、わたしは別に、自分よりも偉いヒトに「デカい顔をしない」とは言ってない。
「昔のことはどうでもいいのよ。常に
「行かない。カサンドルとか
わたしは自分の周りに散らしてある「光の魔素」を手のひらに集めた。
光に魔素はないけれど、天空の魔素に火と水と雷の魔素を集め凝縮した粒子を、わたしたち魔術師や光を使えるヒトたちは、光の魔素と呼んでいる。ちなみに、光を使えることが魔導師になるための
わたしの手の上に
わたしは手のひらに収まる棒桃をそのままかじった。棒桃は普通の桃よりも皮が柔らかく、そのまま食べられる。うん、
「……まったく! アナタの言う『出会いが少ない』は、アナタ自身のせいよ? すぐにおばーちゃんになっても知らないゾ?」
「ならないから。わたし、エルフの血が流れてるもんでして。とゆーわけでそろそろ行ったら? わたし、シャワー浴びたいんだけど」
王都の地下ではキレイな水が循環していて、こんな隊舎でも個別にお風呂がついている。ま、お風呂がなくても自分で水、出せるんだけどね。魔法を使えるヒトならば。
「ホントずるいわよね? まあ良いわ。ワタシは楽しんで来よーっと!」
「はいはいでわでわ、さよーならー」
ララが部屋から出ていった。
さてと、わたしはシャワーを……ってかそうだ、この部屋着。シャワーの後に着ようと思ってたのに。
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