イネスってなんで「ッス」とか言うんだろ。ぶりっ子?
時は昨日にさかのぼる————。
「モロー殿、お久しぶりッス!」
わたしはイネスのモノマネをしながら、
「ドロテ嬢、レディが箒にまたがるのは良くないとおもうがね?」
ヤン•サミュエル•モロー男爵の頭はいつも眩しい。
「そんなのいまさらよ。
「ふむ、失礼したがね? 言語がめちゃくちゃなのに人が混ざることに関して厳しいのは、私もナンセンスだと思うがね?」
この国は「全ての言語は古代ルトゥーシャ語の派生」という考えを持っており、色々な言語が混ざりあっている。
例えば……うん、そうそう、アレだ。
地中深くにいる大地の精霊たちは、大地に浸透する色々な魔素を食べて大地の魔素と土を産み出し、さらに土と魔素たちを食べて金属などの色々な
最近は人工的に造ることもできるみたいだけどそれは置いといて、それを
ウェーラスとクォーペルミューはルトゥーシャ語で、スタチューはフェロンソーワ語である。ちなみにバイレイシャルはベルターニャ語だ。
魔族や亜人を「人間以外」とする風習はどの国にでもあるけど、この国では面白いことに人間同士でも家柄とか肌の色で区別したりする。文化には寛容だけど、人種には厳しいのだ。
国王サマは「我が国は全てに寛大だ」とか言ってるけれど。ま、タテマエって大事だよね。
「それはわたしに、ではなくて直接、国王サマに言ってよ」
「一介の騎士上がりが、そんなこと言えるわけがないがね?」
「わたしだってムリ。宮廷魔導師とはいえ、
この国では平民が成り上がる方法がいくつかある。一つは騎士団に入団すること。うまく出世すれば、モロー卿のように爵位とか役職を貰ったり、議会に参加できるようになったり。魔物たちの呪いもなく戦争もない現代では、他にも沢山の道がある。男には。
女には、まだまだ少ない。わたしの所属する魔装兵団にある宮廷魔導師は、
幸運なことに、わたしは才能に恵まれた。でも、これ以上の出世は、多分ムリ。戦争でも起こったりしない限り。
「ところで、使いを送ったのは三日前だったのだがね? ずいぶんとのんびりだったのだがね?」
「名目は
「それは感心だがね? コレからは質の良い薬草が沢山必要になるからよい事だがね?」
「今回のことも、それに関係すること?」
「……ああ。ここのところ、あらゆる場所で、報告があるがね」
でも、本当の平和とは訪れないものだ。人間たちにも魔族たちにも、自分の利益のために動くやつらがいる。
そのやり方はさまざまだけど、
面倒ではあるけど、それでわたしは、今の地位にいるのだ。文句は言えない。
「んで? またそーゆーヒトたちを、ぶっ倒せば良いわけ?」
「いや、今回の依頼は、そういうものではないのだがね? 十二魔獣像広場で彼女に、コレを渡して欲しいのだがね?」
モロー卿は光の魔素を使って隠していた「ソレ」を
「キレイな槍ね。でもさ、わたしがやる必要ある? 直接あんた……モロー殿が渡しに行けばいいじゃない」
大した装飾も施されていないシンプルな普通の
「
「本人の目の前で駒とかいうの、良くないと思うんですけど」
「事実だがね? よいかね? 人々は上に立つ者達も含めて
げ。話長くなりそう。
「わかった。でも、払うもんはちゃんと払ってよ?」
「もちろんだがね?
「リョーカイ。じゃあ
「そこは任務終了でよいのだがね?」
わたしは再び箒にまたがり、山岳要塞を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます