末永くよろしくお願いしますッス!

「で、でき、たあああああ!!!」


 五日目の朝にして、その「薙刀なぎなた」は、完成した。最後に柄のカシネコの表面に火と木の魔素を注いでツヤを出したそれは、アタシたちが今まで造ったどの子供たちよりも、可愛く見える。


 薄情な親だと自分でも思うが、今までの子たちのときもそうだった。

 ——そのとき産まれた子が、そのときの一番可愛い子。

 それがこの世の真実だと思う。

 もちろん次の日になれば、皆んな平等に可愛いのであるが、今日だけは、誕生日だけは、特別なのだ。


「イネス。ありがとう。俺はこれからモロー卿に連絡する。お前はもう休んでいい」

「冷たいこと言わないで欲しいッス。アタシも納品までは寝ないッスよ!」

「そうか。ありがとう」

「……いいえ、ッス」


 薙刀と、そのレシピを見たモロー卿の反応はタンパクだった。いや、薙刀自体を見たときは「そうだがね! これだがね!!」とか言って、かなり興奮していたのけど、レシピを見て乾いた声で、こう言った。


「コレは——王国の連中が造るには、ちと無理があるんじゃないのかね?」


 当たり前だ。

 アタシとオヤカタが苦労して産み出した子供だ。他のヒトたちに、簡単に真似できるわけがない。


「ええ、ですので、コレからもごひいにお願いします」

「こうなると、そうせざるを得ないがね? ふむ、仕方がない、また宜しく頼むとするがね?」


 うげ、オヤカタ! 余計なこと言わないで! またこのハゲ男爵に振り回され続けるじゃない!


 アタシたちのスローライフはまだ遠い。でも、こんな日々だからこそ、楽しいのかもしれない。

 こんなオヤカタだからこそ、アタシはオヤカタが好きなのだ。

 

「オヤカタ」

「ん?」

「コレからも、末永くよろしくお願いしますッス」

「——ああ」

 


 島 薙刀 廊下 終わり。

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