第14話 子鬼の森
剣からスライムの核を引き抜く。核を見ると真ん中がぱっくりと割れてしまっている。
これは売ることはできないかも。
スライムから他にアイテムが取れるかもと思ったが、核を突き刺した時にスライムの体は液体状となり、もう地面に吸収されている。スライムに使った弓矢は真ん中で折れていて使えそうになかった。
スライムで少し汚れたところをあらかた落とし、探索を再開する。
探索をしていると色々使えそうな薬草を採取することができた。
『ヒール草
ランク1 品質D
ポーションの材料に使われる薬草。スライムの粘液を肥料にして生育していると言われている』
『ホットの実
ランク2 品質D
食べると舌が焼けるほどの辛さを感じる赤い実。中に粉状の辛味成分が凝縮した物が詰まってる。料理のアクセントに使われることがある』
『丸まり草
ランク2 品質E
葉がくるくると丸まっている草。だが、ある程度の衝撃を加えるとくるくると丸まっている葉が開く性質を持つ』
ヒール草を2本、ホットの実、丸まり草を1本ずつでかなり運がいいかも。特に、ホットの実と丸まり草は組み合わせて何か作れそうだ。
そうこうしているうちに子鬼の森に着いた。俺の目の前では木が空を覆い尽くすほど生えている。なので中は薄暗く、言いようのない不安感を出している。
森を進んでいく。草木を掻き分け、しばらく進んでいると何か音が聞こえた。
「グキャャャ」
ひどくうるさく汚く感じる声が森に響く。その声は喜んでいるように俺は感じた。
「何だ?」
俺は声の方に向かう。音をよく聞き、少しすると音の正体が分かった。
「あれは…」
「クキャャ」
俺が目にしたのは緑色の体表を持つ人型の化け物だった。化け物の身長は俺の頭1つ分小さいが、頭には自己主張するように2本の鋭いツノが生えている。
「これはゴブリンだな」
ファンタジー小説でよく出るお馴染みのだ。
俺の前にいるのは3体。それぞれボロい剣、槍、斧を持っている。ゴブリンたちの少し後ろには人がぼろぼろで横たわっていた。
「あれは…NPCか。仇を討っとくか」
一応鑑定をしとく。
『ゴブリン
種族 ゴブリン
レベル 2
能力値
HP 5
MP 2
力 3
防御 4
器用さ 2
速さ 2
魔力 1
アーツ
なし
スキル
剣術 0』
『ゴブリン
種族 ゴブリン
レベル 1
能力値
HP 4
MP 2
力 2
防御 3
器用さ 3
速さ 1
魔力 2
アーツ
なし
スキル
斧術 1』
『ゴブリン
種族 ゴブリン
レベル 3
能力値
HP 6
MP 2
力 4
防御 4
器用さ 4
速さ 5
魔力 2
アーツ
なし
スキル
槍術 1』
強いのから弱いのまでいるな。特に強いのが槍を持ったやつか。
今、俺はゴブリンたちに気づかれてはいない。なら一番強いのを弓で奇襲するのが得策だ。
俺は背中の弓を槍のゴブリンに向けて構える。槍のゴブリンは周囲をキョロキョロと忙しく動いている。だが、上を向いて止まった瞬間、手を離す。弓矢は槍のゴブリンに向かうが、
「グギャ!?」
槍のゴブリンには当たらず、木に突き刺さる。
槍のゴブリンは弓矢が木に突き刺さった瞬間は動揺していたが、すぐさま他の2体のゴブリンに注意を促す。
「グキャ!」
「ギャ?」
「ギャグギャ!」
まずい。警戒されてしまうと俺の存在がバレるかもしれない。ここはもうゴブリンたちに突っ込み、少しでも戦局を握るべきか?
俺はすぐに弓を戻し、剣を構えてゴブリンに突撃する。
「ギャ!?」
一番近くにいた斧のゴブリンが動揺している隙に剣で脳天を叩き切る。鮮血が飛び散り、かかるが剣を振る力は緩めない。剣は頭の半ばで止まり、俺は剣を引き抜く。抜いた剣からは血が滴り、真っ赤に染まっている。
うわぁ、グロい。魚をさばく動画を見たぐらいしかない俺のグロ耐性にはいささかきつい。
だが、俺はあまりそのことを考えず、次に近くにいる剣のゴブリンに向かって剣で切りかかるが、相手の剣に阻まれる。
「グキャャア!」
俺と剣のゴブリンは鍔迫り合いとなる。俺の方が力は上なので一気に押し込もうとするが、
「ぐっ!」
ゴブリンは俺の腹に蹴りを決める。俺は予想だにしなかった行動と蹴りの衝撃で動きが鈍る。
こいつ……蹴りを使いやがった!いや、これはルールなんてないんだ。当たり前なのか。
怯んでいる俺にゴブリンは好機と判断したのか剣に力を込めて俺に押し付けようとする。
「くっ、くそ!」
俺はその力をなんとか横に逸らす。そして、隙ができた剣のゴブリンの腹にお返しとばかりにヒザ蹴りを食らわす。
「グッ…」
ゴブリンはヒザ蹴りをもろにもらい、力なく倒れ込んでしまう。
俺は息をつこうとしたが、背中側から音が聞こえ、とっさに体を横に動かす。すると、俺の横から槍の矛が伸びていた。後ろを振り向くと槍のゴブリンが見えた。槍のゴブリンは伸ばした槍を懐に戻し、再度俺に向かって突く。
どこかの漫画で『槍の突きは早いが点の攻撃なので範囲が狭い』と言っていた。なので俺は最小限の動きで体を逸らしてすかさず槍のゴブリンの脇腹を剣で切り裂く。だが、俺の攻撃は槍のゴブリンが回避したことにより、皮膚を裂くほどに留まる。
「……へぇ、強いな」
俺は感心したようにつぶやく。
「これがImagine worldか」
俺は顔についた血をぬぐいながらも呟く。
「そしてこれが命のやり取りか。少しだけ、少しだけど……興奮するな!」
この戦いがただのデータのやりとりだとしても。
俺は槍のゴブリンに一気に近づく。槍を懐に戻し終えていたゴブリンを俺の接近に対応し、横薙ぎに槍を振るう。目の前に迫る槍を見ながら俺は槍の柄を剣で切り落とす。
「ガッ!?」
槍のゴブリンが持つ槍はひどくボロく、柄を切断することは成功し、槍の矛は俺の後ろに飛んでいってしまう。槍の先がないことに槍のゴブリンが驚き、逃げの体制に入ろうとするのを俺は見逃さなかった。後ろに振り向こうとしたゴブリンに剣を構える。
「これで、終わりだ」
横なぎに振るう。剣はゴブリンの首を捉え分断され、首が落ちて次に体がだらりと崩れ落ちた。
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